いま、ちょうど一分。
神田 るふ
いま、ちょうど一分。
知ってます?
最近、この界隈で発生している連続猟奇殺人事件。
スマホに夢中な人間を、老若男女、世代を問わず、後ろから鉈のようなもので、頭からバッサリ。
誰もいない瞬間を狙って襲われるので、目撃情報は無し。
この町の無人カメラの設置場所も熟知しているのか、犯行前後の足取りも追えないそうですね。
何とも恐ろしく、不可解な犯人ですが、実は、もっと理解しがたい点があるそうです。
なんでも、犯人は殺そうとする人間の背後に、必ず一分間立ち続けているというんですよ。
なんと。驚くことに、犯人から逃れられたと主張する人が何人かいるんですね。
ネット界隈で伝わっている証言によると、スマホを見ていた時、後ろに誰かが立っているような気配を感じたそうです。
すぐに振り返ろうかと思いつつ、様々な事情でスマホの画面から目を離せないまま過ごすものの、いよいよ、背後から伝わる言い知れぬ圧迫感に耐え切れず、スマホから顔を上げて振り返ろうとした、その時。
……ちっ。
低い舌打ちと共に、背後の気配が消えるのだとか。
気配を感じてスマホから顔を上げるまで、一分。
単なる勘違いかもしれないものの、ひょっとしたら殺人犯の魔の手から助かっていたかもしれない人たちは、口をそろえて、ちょうど一分だったと言っているそうです。
もちろん、一分ジャストだったとは、とうてい思えません。
ただ、犯人がカウントを始める時間と、ターゲットにされた人とのカウント開始時間が一致するとも限らないんですよ。
標的の人間が五十八秒の時点で顔を上げても、犯人のカウントがちょうど一分だったら、狙われた相手は助かるのでしょう。
何故、一分なのか。
それは犯人の胸中にしか無い答えなのでしょうけどね。
ところで。
気づいてました?
私があなたの背後にずっと立っていたことを。
……。
いま、ちょうど一分。
……。
……ちっ。
いま、ちょうど一分。 神田 るふ @nekonoturugi
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