彼はseek燕 スー。私はデタラメ・シークエン スー

この物語は、ごく普通のサラリーマンである「私」が、自身の持つ

「超絶にクサいオナラ」

「完璧な無音でのスカしテク」

という二つの特技を武器に、
過酷なオフィス社会を生き抜く様を描いた、
一種のサバイバルノベルだ。

傍から見ると、彼は非常に厄介な人物である。

しかし、彼本人の行動原理。

彼は、燕のごとくオフィスという
広大な空間を彷徨い続け、

定住地をseek(探す)しようとする!
社会的な居場所を確保しようとする!

これは、必死の生存戦略なのだ!

その根底にあるのは、
他者から理解されない才能や、
社会から疎外される恐怖といった、
普遍的な人間の感情なのだろう。

しかし、そんなこと微塵も知らぬ女性陣が
オフィスを分断し、
主人公を追い詰めていくくだりは、
まるでSF映画のようだ。

日常に潜む些細な「匂い」を、
壮大なスメールの戦いに昇華させている

これは、誰もが持つであろう
「人には言えない秘密」を巡る、
ユーモラスで、
そしてちょっぴり切ない、
孤独な戦いの記録だ。



......実を言うと、私自身。

「サイレン スー」(第一部)
「バイオレン スー」(第二部)
「サイエン スー」(第三部)

この三部作あるうちの終わり、
つまり、第三部から逆向きに
読み進めてしまった......


痛恨のミスだと、私は思った。
シークエンスを間違えたぁ!


───しかし、感動できた。
感動できてしまった!
......なんとも悔しいなと思う。

なんというか......本来読むべき
順番というものがある。
1.2.3と順序をもって読み進める。
それを逆側から......なんたることか!

されど......けれどもよ。

逆から読んでしまっても、
ここまで面白いとは......
言葉のチョイスや遊び。
そんで物語の展開。

実にいい!

......これからもう一度、
正しい順番から読み進めようと思う。

逆側でこれだけ楽しめたのだ。
こんなにエクセレントなクオリティ!


......さて、君。


ここまで見たからには、
第三部まで、最後まで読んでみて欲しい。



多分......いや断言しよう。

君は感動する。

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