“普通じゃない”毎日を、生きる力に変えて

　この作品は、ただの育児エッセイではありません。予想のつかない毎日を、笑顔と涙で乗り越えてきた家族の物語が、心にそっと寄り添うように、丁寧に綴られています。

　生まれながらにして過酷な状況に置かれた咲ちゃんと、その成長を見守る母の視点が、静かでリアルな言葉で描かれ、読んでいるこちらも一緒に時間を歩んでいるような気持ちになります。医師の予測を超え、少しずつ咲ちゃんが「咲」らしく咲いていく姿には、涙だけでなく確かな希望も宿っています。

　医療や育児に関心のある人はもちろん、生きづらさを抱えた誰かや、大切な人と向き合っているすべての人におすすめしたい一作です。