五
京の都に戻ったオレは本能寺を目指す。織田信長と会ったのは本能寺だ。何か手掛かりがあってもいいはず。それにしても京の都は本当に物騒なところだ。あちこちで斬あいが起きている。ようやく本能寺にたどり着いたオレは目を疑った。
本能寺ってこんなに小さな寺だった?
まあ、三百年も経てばそんなこともあるだろうと思いオレは境内に入っていく。
「カヤト、こっちこっち」
オレを呼ぶ声の方へと歩いていく。
「良かった。織田信長って言ってたからここに来るかなって思ってたんだ」
「いまい殿か?」
「そうだよ。どうしよう。誰かに憑依したほうがいい?」
オレはしばらく考えてから口を開いた。
「いや、そのままでいい。それより、いまい殿、長州藩というのはここからどう行くのだ?」
「長州藩? 長州⋯⋯。あ、下関だよ。フグだよ。フグ」
「フグ?」
「そうだよ。フグ、すっごい美味しんだ。えっと、九州の手前だよ」
「九州の手前? 壇ノ浦のあたりだな。昔、行ったことがある。ありがとう。桂殿を追う。いまい殿も行くか」
「モチのロン!」
モチのロン?
なんだ、それ?
今、オレは長州藩に向けて歩いている。見た目には一人で歩いているように見えるだろうが、いまい殿と一緒だ。
「ねえ、雪乃のことどうしよう」
今井幸代はオレに話しかける。
「おそらく雪乃は比叡山に行った時に向こう側に行ってしまったのだろう。俗にいう成仏ってやつだ。めでたいことだろう」
「めでたい? 何が!」
オレの言葉に今井幸代は噛み付く。
「いまい殿のようにこの世に彷徨っていては転生できない。次に向かうにはとりあえず成仏しないとね」
「成仏⋯⋯。そんなのはいつかすればいいじゃん。とりあえずはやり残したことをやりたいだけだよ。うちは」
今井幸代とそんなやりとりをしていると萩の街が見えてきた。
鬼導丸 杉山薫 @kaorusugiyama
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