四
「おだのぶなが? 久しぶりにその名で呼ばれたような気がする。お前は?」
「オレはカヤト。京の都の守り神だ。前に一度会ったよな。どうした。この世に未練でも残したか?」
「未練? 天下統一⋯⋯。違うな。未練などは何もない。ないと問題あるのか?」
「大いにあるな。神仏でもないお主が⋯⋯。まあいい。それで現世での名は?」
「服部半蔵⋯⋯」
なるほど、それで鎖鎌の男は憤ったのか。
「家康の下僕にまで堕ちて、なおこの世にしがみつく亡霊。オレが成仏の手助けをしてやろう」
オレがそう言うと織田信長は寂しそうに笑った。
「カヤト
オレが
「こんな奴に半殺しにされるなんて沖田の坊やにも困ったもんだね」
オレの頭を踏みつけ、茶鈴は嘲笑る。
「二人ともそいつから離れろ」
僧兵のような大柄な男が叫び、鉄のこん棒を振りかざしてオレに打ち込んでくる。オレは左手で鉄のこん棒を掴みグニャリと曲げ地面に叩き落とした。
「お主、何者か?」
僧兵のような大柄な男はオレに訊く。
「何に見える?」
「お、お、鬼以外には見えぬが⋯⋯」
オレの問いに僧兵のような大柄な男はたじろぎながら答える。
「そうだな。オレは鬼だ。晴明様より
オレはそう言って右の拳を僧兵のような大柄の男の顔面にたたみ込み男を地面に叩き伏せた。
「鬼がカヤト
服部半蔵の言葉を聞き、オレは
「まあ、神仏なんて案外こんなもんだ。さっきも言ったがオレにもオレの都合がある。今回はこの辺にしよう」
オレはそう言うと人の姿に戻り後ずさる。織田信長が追う素振りを見せないので、彼に背を向け歩き始めた。
いまい殿はうまく逃げただろうか⋯⋯。
オレは比叡山を下りて京の都に向かって歩いていく。長州藩士がいなくなった後の京の町も物騒な状況だ。
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