放浪の愚者たち

さあ、旅人よ、今宵はひとつ、奇妙な物語を語って聞かせよう。そんじょそこらの英雄譚ではない。これは、歴史の片隅に忘れられた、どこか歪な者たちの歌だ。古の書庫の埃をかぶり、誰にも読まれることのなかったこの一冊――。
そこに描かれる英雄は……神の威光を地に堕とした女神、ただ一度きりの破滅の呪文に魂を燃やす魔道士、そして傷つくことにこそ至上の悦びを見出す女騎士。あまりにも人間臭く、愚かで、どうしようもない者たちばかり。
聞くがいい。その調べは、時に世界のどんな伝説よりも滑稽に聞こえ、そしてなぜか胸に残り続けるという。さあ、語ろう……愚か者たちのための叙事詩を！