エピローグという名の道中
第40話:オカルトをブライトに!
始業式。二年生となった
「どうだった、我が
部活動紹介が終わり、教室へ戻る途中、やはり列を乱して日暮のもとへ向かった
「お前が関わったんだから、言うまでもないだろう」
「それでも聞きたくなるのが制作者の
オカルト研究部は、その名を映像部に改めた。新しい部長は以前から名称を変えるべきだと考えていたという。部員の中でも特に反発はなく、同じことを考えていた雪森の賛同もあって、ことは何の滞りもなく進んだようだ。正式には生徒会本部で認められた五月以降からの改名となるが、混乱を避けるため、今年度が始まってから名乗ることを許されたという。
帰りのホームルームが終わると、日暮は早歩きで郷土資料室へ赴き、前年度では
向かいには、空席が二つ。
会員が増えてほしいという願掛けで、日暮は自身の分も含めて机を三つ配置したのだ。
早めに来たのはいいものの、誰もいなければやることがないと気付いた日暮は、何をしようかと考えているうちに、自分の思考の中へ溶けていった。
深串が言うには、旧オカルト研究部については、入部した新入生全員があの独特な空気に馴染めていて、七瀬川先輩のように方向性の違いを感じた者もいなかったらしく、昨年度に退部した部員は一人もいなかった。
しかし、疑念が胸で疼いている。『消えるオカ研部員』は、実は今もまだ続いているのではないかと。気に留めなかった違和感を思い出し、探っていけば分かる真相があるのではないかと。
そして、考えずにはいられない。他でも同じようなこと――非科学的な事象が、認識されないまま、あるいは現実的でないとして見過ごされてしまっているようなこと――が起きている可能性を。
オカルトは派手なパフォーマンスでブームになっては、タネをばらされたり、本人から嘘だと明かされたり、インチキを暴く検証という形の見せ物にされたりして廃れるという流れを繰り返してきた。あらゆるものを科学で解明しようとする現代では、オカルトの肩身はさらに狭まっている。
しかし、それは同時に視野も狭めてしまっているはずだ。
確かに、オカルトは非科学的だ。しかし、科学が明らかにできていないものはたくさんある。運や直感、奇跡などの超常的な物事は存在を受け入れられているが、メカニズムまでは解明されていない。錯覚やプラズマ、枯れ尾花も、オカルトを否定する確実な根拠にまでは至らない。
もし、オカルトの存在を証明できたとしたら、分野に開拓の余地が生まれる。ただのパフォーマンスとしてではなく、有意義な研究対象として発展する可能性が芽生えるのだ。その軌道に乗れば、今の陰気で、怪しくて、胡散臭くて、将来の展望がないというオカルトのイメージは、明るく、論理的で、真実味や展望があるものへと変貌していくことだろう。
希望ある光が路傍に並んで進路が指し示され、その道を進む人たちの研究でさらに盛んになる。
その
「あの、失礼します」
日暮が巡らせていた思考を止めたのは、男子生徒の少し上ずった声だった。
扉のほうを見ると、顔一つ分だけ開いた隙間に、緊張した面持ちがある。
ちらりと見えている上履きの色は青色。三色でローテーションしているので、今年度では一年生の色だ。
「オカルト研究会ってここで合っていますか?」
瞬間、湧き上がった高揚する気持ちが日暮の顔に笑みを作る。
「ああ。ここがオカルト研究会だ。ようこそ」
日暮が言うと、その生徒は再度会釈をして中に入った。
そのあとに続いてもう一人、「失礼します」と遠慮がちに頭を下げて、同じく上履きが青の女子生徒が入ってきた。
二人も!
「ちょうど席が二つあるんだ。さあ、座ってくれ」
――さあ、座って!
ぱっと明るくなった顔を思い出して、日暮の笑みに懐かしむような温かさが加わった。
男子生徒は首の後ろに手を置いてひたすらに頭を下げながら、女子生徒は物静かというよりは緊張している様子で、それぞれ椅子に座る。
日暮は一つ咳ばらいを入れて告げた。
「俺は日暮信義。ここの会長だ。このでっかい図体もあってヒグマと呼ばれている。ぜひ、そう呼んでほしい」
学ランに付けた四角い会長バッジを見せながら言うと、二人は一瞬きょとんとして、そのあと固かった
「さて、このオカルト研究会についてだが、活動内容を話す前に一つ伝えておきたいことがある」
教科名を書く欄に書かれていたのは「しんぎノート」。
「活動の方向性についてだ。一言で言うなら――」
一ページ目が開かれ、大きな手が一行目を指さした。
「オカルトをブライトに!」
オカルトをブライトに! 大河井あき @Sabikabuto
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