自由と混迷、異世界トラブルに巻き込まれる日常
- ★★★ Excellent!!!
<プロローグ1・2を読んでのレビューです>
物語は、25歳の日葵が過酷な労働生活から解放され、束の間の自由を謳歌する描写から始まる。現実的な職場事情や貯金の話など、細かく日常の質感が描かれ、彼女の心情に自然に同化する。そこへ突如として現れる異世界からの剣聖アサヒ・ソレイユ=サンライズベースと、歩く人形のような存在が絡むことで、日常が非日常へと一気に揺らぐ。ユーモラスかつ混乱した展開ながら、登場人物の感情描写は丁寧で、軽快な語り口が読者を引き込む。
「――日葵の身体から重力が消えた。」
突如として現れる非現実的な出来事を、物理的な感覚の喪失として描くことで、日葵の驚きと困惑が瞬時に伝わる。軽妙な文体の中にリアルな感覚が挟まれることで、読者は状況の不可思議さと主人公の戸惑いを同時に体験できる。
自由を得た喜びと、日常の安全圏を揺るがす不可思議な事件との対比が鮮やかで、人物の性格や行動のユーモアも際立つ。細部まで丁寧に描かれた日常描写と、予想外の展開が交錯する筆致に、思わず引き込まれる。