コンビニ行ったら剣聖に拉致られた。戻ったら自宅がダンジョンになってた。
雲州みかん
プロローグ コンビニ行ったら剣聖に拉致られた。帰宅したら自宅がダンジョンになってた。泣きたい。
プロローグ
「今までお世話になりました」
にこやかにして晴れやかな顔で、快活に声を張り上げていた女性は、しっかりと礼儀正しくお辞儀をしていた。
そこからまばらな拍手。
完全な義理ですよと形容出来る拍手が周囲に響いた所で、彼女はその場から離れた。
スタッフルームと思われる部屋の扉を開けて通路に出ると、そこから早足に外へと向かった。
程なくして、快晴の空が見える場所までやって来て、一歩――二歩。
「ぃやったぁぁぁぁぁっ! やっと辞めてやったぜ、こんにゃろめぇっ!」
彼女――
今年で25歳を迎える独身女だった日葵は、就職難と言う荒波に見事大敗し、アットホームな会社にどうにか滑り込む事でギリギリ生活を繋いでいた。
大学を卒業してから25の誕生日を迎える現在に至るまで、平均睡眠時間はなんと3時間!
これでも、寝て起きて仕事の連続である。
休みはあってない様な物で、まともに一日を休んだ記憶なんて一年の間に2~3回程度しかない。
連休は何味だったのか忘れてしまった。
「こんな過酷な状態で給料が手取りで18万とか、労働基準監督署は何をやってんだよ、マジで!」
解放感も相まって、日葵は青い空へと鬱憤晴らしの喚き声を放った。
何はともあれ、多少の貯蓄が出来た所で会社を無事退社した。
家に帰るのは風呂と寝るだけだった上に、食事は
つまり、給料は安かったけど、結構貯金は貯まっていた。
気分は漁船にでも乗ったような感覚だ。
「これから自由を謳歌してやるぞ~っ!」
まずは久しぶりの自由を堪能してやろう!
思った日葵は、二年振りの解放感で一杯になっていた。
~三ケ月後~
「やべぇ……そろそろマジで仕事探さないと生活できないんですけど……」
通帳を見ながら、地味に顔を青くする日葵がいた。
顔は青だったけど、通帳は赤だった。
もう、ビックリするまでに赤信号だった。
「まだ仕事したくないんだけどなぁ……あ~メンドイ」
自室となる八畳の和室で一人項垂れる。
幸か不幸か……はたまた、これも親のお陰と感謝すべきか?
既に他界してしまった両親の遺産として一軒家が転がって来たりもする。
同時に両親が残してくれたお金もそれなりにあったのだが、日本って国はなんでも税金を山ほど取りたがる為、最終的には微々たる金額しか手元には残らなかった。
だれか今の日本を変えてくれと、他力本願アタックをかましてやりたい所である。
閑話休題。
ともかく、彼女は一軒家に住んでいたりもする。
しかも庭付き一戸建てだ。
そこだけは幸運と言えたが、いかんせん家だけあってもお腹は膨れない。
「とりま、ハローワークにでも行くか……」
足取り重く、日葵はくたびれたスウェットを適当に脱ぎ捨て、職場で使用していたスーツに着替えると、地味に洗車を忘れている愛車に乗ってハローワークへと向かうのであった。
それからしばらく、ハローワークで次の転職先を探し始める。
「ん~? なになに? アットホームな会社ぁ? はんっ! 令和のご時世、そのキャッチフレーズはブラック企業の常套句なんだよ」
日葵は鼻で笑う。
地味に達観した目つきで、世の中を斜に構えた見方をしていた。
彼女が如何に切ない労働環境化にあったのか分かる態度と言えるだろう。
以後、ハローワーク内でどうにか次の転職先候補を見付けて外に出る。
正直、一回の面接で通るとは思ってないが、何もせずに自宅でゴロゴロしてるよりはマシだろう。多分。
何にせよ、これで転職先がアットホームな会社じゃないのなら万々歳だ。
表記されている内容が額面通りなら、週休二日制で手取りも20万越える。
あんまり良い生活は出来ないかも知れないが、これでも前より100倍マシな条件なのだから、今までの自分は一体なんだったのかと泣けて来る。
「よし、とりま今日は帰ろうかな~♪」
特に仕事をした訳でもないと言うのに、謎の充実感のような物を感じた日葵は、幾分か陽気な声音になって歩き出した。
向かうは、駐車場に止めてある愛車。
本来、ハローワークの駐車場は建物とその敷地内にあるのだが、少し遅くなると駐車場は満車になってしまう。
結果、遠くにある第二駐車場へと向かう必要があった。
今回は『思い立ったが吉日の原理』で行動している為、朝早い組の特権と言えるだろう第一駐車場は満車御礼。
当然、遠くにある第二駐車場コースを強いられる事となる。
地味に歩く事になるのだが、途中コンビニがあるので帰り道だと割と便利だ。
帰りに適当な物を買って帰れるのは利点と言えるだろう。
……いつもであるのなら。
「ちくしょう……ここは、何処なんだよバカヤローッ!」
その日、ハローワーク帰りに立ち寄ったコンビニで、変な酔っ払いが缶ビール片手に騒いでいた。
日葵的に言うのなら『そう言うお前は真昼間から酒を煽ってる馬鹿野郎だな』と一蹴してやりたい所だ。
しかし赤の他人に罵声を浴びせる程、日葵は子供ではない。
ついでに度胸もない。
変なヤツに絡む程、人生捨ててない日葵は、そのまま何食わぬ顔をしてコンビニの自動ドアに立った。
そして、後に後悔する事になるのだ。
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