第4話 警部補・シゲさん、ド新人にジェネレーションギャップを感じる
会議室B-
ご両親さまにご納得いただくためだけの仕事。
だから、名字を名乗る前に、警部補をつけることにした。
両親の反応はどっちに転ぶか。
なんと警部補が出てきてくれた!
警部じゃなくて警部補しか出て来ないのか…
前者であることを望む。
残念ながら、結果は後者だった。
2人とも軽い失望の影。
仕方がない。
第2弾を放つか。
この年代なら通じるだろう。
「トラベルミステリーに出てくるカメさんも警部補なんですよ」
「え?」
相手は虚を突かれたらしい。
が、この話をすると、最初はたいていこんな反応だ。
「警部が有名ですが、警部は自分で捜査をせず、部下に命令してますよね。
警部の命令で、実際に捜査しているのは警部補のカメさんです」
2人の顔がパッと明るくなった。
警察がカメさんレベルの有能な刑事を投入してくれた―
こう思ったのだろう。
オレは、視線を一瞬だけ右隣に向ける。
彼女はなんの話をしているか分かっていないようだ。
ジェネレーションギャップ。
とは言え、ネット検索のせいで時刻表が壊滅した時代。
“勉強不足だ”と彼女を責めることもできまい。
そもそもフィクションだし。【注1】
両親も視線を
―じゃあ、この若い女性はナニ?ーという疑問。
まさか、勉強のためド素人がやってきました、なんて言えない。
「似たタイプ2人だと同じ思考パターンに陥ったり、思わぬ見逃しを起こすことがあります」
「はぁ」
と父親はまだ不満の顔。
「彼女は、娘さんに一番年齢が近い女性刑事です。
うちの署で一番の若手女性刑事こそが、娘さんの思考・行動を一番つかみやすいと考えて、担当に入れた
一本木を書記かなんかと勘違いしてたのだろう。
オレの説明に納得したとみえる。
父親も母親も、とりあえず「警察の対応はクソ」という不満は抱いてないようだ。
一本木は、このやり取りをどう思っているだろうか?
時間の無駄だと思っていないことを祈る。
“ちゃんとした肩書の人間が対応している”と思わせる―
“ちゃんと時間をかけて対応してもらった”と思わせる―
相手を納得させるためには、こういったテクニックが必要だ。
一連のやり取りが、彼女にとって勉強になってくれれば良いのだが。
つかみはこの程度にして、そろそろ本題に入るとしよう。
笹山
――――
【注1】
警部補・カメさんについて
👇
西村京太郎「
昔は2時間サスペンスドラマ枠でやたら「十津川警部シリーズ」をテレビ放送していたが、最近は放送がない。
だから、若い人は十津川警部とかカメさんと言われてもピンと来ないかもしれない。
次の更新予定
2026年1月13日 21:00
宝くじを当てた女性は幸せをつかめたのか?―ある高額当選者をめぐる社会派ミステリー 永田永太郎 @shinjinganbaruzo
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