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クライングフリーマン

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======== この物語はあくまでもフィクションです =========


「右手に見えますのが、居眠り・おしゃべり・スマホ弄りで有名な国会議事堂でございます。左手に見えてきましたのが、我が儘で女子トイレを女子に使わせなくなった議員会館でございます。」

「ガイドさん、政治家に怨みがあるんですか?」

「勿論でございます。こう見えて、怨霊バスガイド、でございます。お手元のスピーカー、聞こえづらいようでしたら、『オンリョウ』を上げてお楽しみ下さい。あ、ここ笑うとこですよ。」

無料都内案内バスの利用客は、不安と言うより、『不吉』を感じた。

「まもなくバスは、桜田門、つまり警視庁を横切ります。警視庁に自主、じゃなかった、出頭したい方は、手を挙げて下さい。いない?じゃ、トイレ休憩なしね。」

無料都内案内バスの利用客は、困惑した。

1人の老紳士が手を挙げた。

「私は、今朝、大量の『せいし』を殺したので、出頭します。」

「では、警視庁でトイレ休憩します。」

バスは、30分、停車した。

利用客は、慌ててトイレに駆け込んだ。

老紳士に並んで用を足した若者が尋ねた。

「じいさん、助かったよ。でも、なんであんなこと言ったの?」

「あのガイドはな。洒落が好きなんだよ。元は芸人だからな。知らない?」

「ああ。」若者は、クビを振り振り、バスに戻った。

「皆さんは、この辺で『桜田門が変』だったことをご存じですか?」

「暗殺ですね。」と、若者は得意げに言った。

「いーい質問ですねえ。その通り、です。」

若者は、ぎこちなく笑った。

「阿倍野さんが暗殺されたのは、どこでしたっけ?」

「奈良県です。」と、女性が言った。

「ぶ、ぶー。日本です。バスは一路、浅草寺に向かいます。浅草寺と浅草神社の違いは何でしょう。」

「浅草寺はお寺で、浅草神社は神社です。」

「ぶ、ぶー。浅草寺と浅草神社は、非常に深い関係にあります。浅草寺は都内最古の寺院であり、浅草神社の創建は浅草寺のご本尊である聖観世音菩薩を祀るきっかけとなった人物たちを祀る神社です。」

若者は落胆した。黙ってれば良かったのだ。

1時間半後。

「では、到着しましたので、乗降口から近い方からお降り下さい。」

若者は驚いた。

到着したのは、浅草寺でも浅草神社でも無かった。

足元には、一面にドライアイスが・・・。

「やっと、着いたか。」と、老紳士は言った。

若者は狼狽しながら、バスガイドに尋ねた。

「ガイドさん、ここは?」

「よーくご覧ください。冥土、でございます。」

若者がキョロキョロしている内に、ガイドもバスも消えていた。

そして、他の利用客も。

「だ、だれか・・・。」

―完―

※2025年6月16日の再投稿です。




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