音楽が作り出す「虚構の夏」と、天窓の外に広がる「リアルな夏」と

 とにかく、シチュエーションが最高です。

 夏休み、天窓のある部屋にこもってひたすらピアノの練習を続ける主人公の蛍。

 天窓から見える夏の空。それだけが自分と外の世界を繋ぐもの。そして、あとはひたすらピアノの音色で心を満たす。

 様々な音楽がビジュアル的なイメージを持ち、心の中を行き来して行く。
 そして同時に、友人たちからのお誘いも受け「リアルな夏」の情緒を堪能しにいくことにもなる。

 音楽によって作り出される「虚構の夏」と、実際に外の世界に広がっている「リアルの夏」という対比。

 芸術家ならではの心の内側を活写する文章も見事だし、更に高校生ならではの夏を満喫する姿というのも爽やかでした。

 圧巻な音楽描写と爽やかな青春の光景。その二つが見事に融合した素晴らしい作品でした。

その他のおすすめレビュー

黒澤 主計さんの他のおすすめレビュー2,021