高木夢子のハッピー・ハッピー・サンデー

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高木夢子のハッピー・ハッピー・サンデー

「皆さんこんばんは。今週も始まりました、高木夢子のハッピー・ハッピー・サンデー。この放送は最期もにこにこ笑顔でお別れ、『スマイル葬儀社』の提供でお送りします」


CM:スマイル葬儀社(15秒)


「皆さん、この週末、ハッピーにお過ごしでしたしょうか。地球最期の日まで残すところあと一日となりました。十三年間、毎週休まずお届けしてきたこの番組も、いよいよ今日の放送でラストとなります」


「『あした誰かに言いたくなる』をテーマに、皆さんの好奇心にアプローチする雑学をご紹介するこの番組。十分という短い時間ではありますが、お聞きくださっているリスナーの皆さんにとって、コミュニケーションの輪が広がるきっかけになりますようにという想いで放送を続けて参りました。最期まで番組に携わることが出来て、私も本当に嬉しいです」


「番組最終回に向けて、今月は過去の放送の中で私が体験した『ハッピーな想い出』をご紹介して来ましたが、今日最終回は『悔いのない終わり方』についてお話ししたいと思います」


「泣いても笑っても、私たちが生きられるのは残り一日。せっかくならスッキリとした気持ちで最期の瞬間を迎えたいですよね。そこで提案したいのが、嫌いな上司や疎ましい家族、腹の立つ恋人や友人の存在をキレイさっぱり消してしまって終わらせること! どうせ皆いなくなるのなら、その前にやりたくても出来なかったことにチャレンジしてみては如何でしょうか?」


「方法については色々あると思いますが、私のイチオシは何と言っても『撲殺』ですね」


「『撲殺』とは皆さんご存じの通り『相手を殴って殺害すること』ですが、自分のこぶしであれば事前に準備する物などありませんので、急に感情が高ぶった時でもその場で行為に及ぶことが出来るのはとても簡単で良いですよね」


「でも、素手で相手を殴ると自分の手もそれなりにダメージが及ぶのがツラいところ。こちらとしては憎い相手をただ殴り殺したいだけなので、出来れば無駄にダメージを受けるのは避けたいところです」


「そこでオススメしたいのが道具を使った撲殺です。ドラマや小説などでよくありますよね。ゴルフクラブや大きなガラス製の灰皿といった分かりやすいモノのほか、血を見るのがあまりお好きでないという方には砂や金属などを靴下にぎゅうぎゅうに詰めるだけで出来上がる即席ブラックジャックなんてモノもあります」


「いずれにしても、道具を用意するという時点で既に計画性アリと見做みなされそうですが、そこで捕まったとしても明日には地球が無くなりますので、罪を犯そうが犯すまいが全員いなくなるのは同じと思えば何でも出来る気がしませんか?」


「ということで、今日も皆さんからのお便りを募集します! 『地球が消滅する前にコイツだけは消しておきたい』など、長年抱えていた恨みつらみは勿論、生活の中でちょっとイラっとする存在など、リスナーの皆さんの想いの丈を番組までメールでお寄せください。メールアドレスは×××@△△△.comです」


「それではここで一曲、お届けしましょう。W市にお住まいのラジオネーム・予言者みぃくんさんから『地球最期と言えばやっぱりこの曲でしょう!』ということでいただきました。エアロスミスで『ミス・ア・シング』」


M:1'37"(一番終わりでトークへ)


「エアロスミスで『ミス・ア・シング』をお届けしました。早速お便りを頂戴しましたのでご紹介しますね」


「A市にお住まいのラジオネーム・赤箪笥黄箪笥茶箪笥さんから」


「『いつも楽しく聴いています。僕が消したいのは馬鹿で愚かな僕の両親です。父は自分の行きたかった大学に僕を入れさせようと、勉強ばかりを押し付けてきます。明日には地球が無くなって死ぬのに、それでも机に向かえ、テキストを開けと口うるさく言うのです。馬鹿みたいだと思いませんか? 何度も嫌いだと言っているのに身体にいいからと納豆を食べさせようとする母の愚かさにも嫌気が差しています。残り少ない食事の時間に何が楽しくて嫌いなものを食べないといけないのか、意味が分かりません。いっそのこと僕の最期の晩餐はあの人たちをバラして、そのあばら肉を焼いたのをごはんに載せた焼肉丼にするのもアリですよね?』」


「わぁ、これはつらかっただろうなぁ。よく今まで耐えましたね。赤箪笥黄箪笥茶箪笥さんは物凄く頑張り屋さんなんだと思います。その頑張りがあれば、きっと美味しい焼肉丼が出来ますよ!」


「続いては、T県M町にお住まいのラジオネーム・カレンダーは金曜日さん。いつもありがとうございます」


「『夢子さん、こんばんは。私が地球最期に消してやりたいのは、十二年前、娘のことをビルの屋上から突き落として殺した同級生三人です。当時十三歳だったアイツらは刑事罰に問われることなく、名前を変えながら今も生きていることがとても悔しかったですし、親として何もしてやれなかったことを後悔する毎日でした。でもそれも明日で全て終わりです。今、私は車の中でこの番組を聴いているのですが、実は後部座席に二人、トランクに一人、娘の同級生が転がっています。いざ捕まえたもののどうすれば良いのか迷っていたのですが、夢子さんのお陰で決心がつきました。将来水族館の飼育員になるのが夢だった娘の無念を晴らすためにも、今から三人の足におもりを結び付けてからS埠頭から放り投げて、コイツらを魚のエサにでもしてやろうと思います。夢子さん、こんな私にどうかエールを下さい。お願いします!』」


「カレンダーは金曜日さん、ここまでの準備、めちゃくちゃ大変だったと思います。本当にお疲れ様でした! 思い残すことがないようぜひやり遂げましょう! 応援しています!」


「まだまだたくさんのお便りが届いているのですが、そろそろお別れの時間となりました。『高木夢子のハッピー・ハッピー・サンデー』を十三年もの長い間愛してくださり、本当にありがとうございました。リスナーの皆さんそれぞれにとって、あすがハッピーにあふれた一日となりますように。お相手は高木夢子でした」


「それでは素敵な終末をお過ごし下さい!」


『高木夢子のハッピー・ハッピー・サンデー。この放送は最期もにこにこ笑顔でお別れ、スマイル葬儀社の提供でお送りしました』

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