物語は桝峪(ますたに)という人間がある理由で死んだ、と主人公が友人に電話をする場面から始まります。
その死は、要は桝峪のエロが原因だった、と冷ややかに語る主人公ですが、その内容がウィットに富んでいて実に興味深かったです。古典作品の話に始まり、最も高額な市販エロゲの話や、AEDという言葉の別の意味はなんだという話などなどです。
主人公による一人語りの形式ですので、まるで自分が彼の友人となって話を聞いているような感覚でした。客観的に見れば下卑たオタク同士の会話なのでしょうが、成熟した大人の男性ならではの高尚な会話でもありました。作中で出てきた話は自分でも調べて、あれは本当のことだったのかと非常に勉強になりました。
ホラーとは名ばかり、下ネタでブラックなコメディとは作者の談ですが、オチはやはりホラーでした。ぜひ一読いただきたい、大人向け全振りの作品です。
この短編は
ただの猥雑な笑い話に見せかけて──
現代の「言葉」と「生成AI」の関係を
鋭く突きつけてくる一作です!!
直接的な描写や露骨な展開は避けつつも
読後には強烈な後味が残ります。
特に印象的なのは
〝言葉〟が単なる情報や表現を超えて
人の肉体や生死にまで
作用しうる存在として描かれている点です。
主人公の軽口や冗談めいたやり取りの中に
言葉と欲望
そしてAIとの危うい関係性がにじみ出ていて
どこまでが笑い話で
どこからが現実の恐怖なのか──⋯
その境界が曖昧に感じられる構成は見事です!!
また、古典文学やエロゲ
都市伝説的な俗説を織り交ぜながら進む語りは
一見散漫に見えて実は周到に練られており
読んでいるこちらも
「言葉に呑み込まれる感覚」を
疑似体験させられている──
そう、感じてしまいました。
軽快な会話調で進む分
ラストに近づくにつれての
急激な不穏さとの落差が際立ち
虚構と現実の境界線を
踏み越えるようなスリルがあります。
総じて、本作は
「AI時代の言葉中毒」を描いた
ブラックユーモアであり
同時に
寓話的ホラーとしても成立しています。
笑いながら読んでいたはずが
読み終えた瞬間──
背筋に冷たいものが走る……
そんな体験を与えてくれる短編です。
「桝峪」という人物が「急性心不全」で亡くなったという話から始まる本作。しかし、当然死因はそうではない。本当の死因が何なのかについてはぜひとも本作を読んでみていただきたい。「嘘だろ!」と言いたくなるだろう。
昨今、生成AIが流行しAIに都合の良いことを言ってもらったり、小説を書いてもらったりする人も多い。そんな生成AIは「安全」だろうか? そう考えさせられる話でもある。とはいえ、この作品は作中に登場する死因の恐ろしさよりも、面白さ、こういうことがあるかもしれない、ということを楽しむことができる話だと思っている。
あなたも、言葉によって心を動かされることはあるだろう。しかし、心を言葉に奪われるとどうなるのか、ぜひ楽しんでいただきたい。