第6話:『共犯者の笑み』(サイコホラーエンド)
:『共犯者の笑み』(サイコホラーエンド)
警察が踏み込み、全てが終わったワインバル。年配の刑事が咲に声をかける。
「斎藤咲さんだな。ご協力感謝する。……しかし、一つだけ不可解な点がある」
「何でしょう?」
「君が我々に通報した時刻と、君がこの店の予約を入れた時刻。通報の方が、30分も早い。まるで、これから起きる全てを知っていたかのように」
刑事の鋭い視線が、咲を射抜く。
咲は、表情一つ変えずに、にっこりと微笑んだ。
「ええ。知っていましたから」
咲のスマホの待受画面が、ふと刑事の目に入る。
それは、咲とあやめが、満面の笑みでピースサインをしている、仲睦まじいツーショット写真だった。
写真の日付は、今日の昼休み。
「最初から、全部……あの子と私の、計画だったんですよ」
刑事は絶句する。
金に汚い男たちを社会的に抹殺するための、二人の少女による、完璧で残酷な共同幻想。あやめの涙も、恐怖も、全ては最高の舞台を仕上げるための演技だった。
連行されていくパトカーの窓越しに、あやめがこちらを見て、小さく口の端を吊り上げたのが見えた。
私もまた、彼女に応えるように、静かに微笑み返した。
灰色の金曜日は、私たち二人にとって、最高のエンターテインメントの幕開けだったのだ。
案2:『次のターゲット』(ネバーエンディング・バッドエンド)
【あらすじ】
事件から数ヶ月後。
咲は、すっかり自信を取り戻し、華やかなオーラを纏う女性へと変貌していた。新しい職場で、一人の後輩が彼女を慕っている。地味で、少し気弱だが、真面目で素直な女の子だ。
ある金曜の午後五時。咲はその子のデスクへ向かう。
「ねえ、美咲ちゃん。今日、飲み会しない?女子会!」
後輩の美咲は、花が咲くような笑顔で頷いた。
「はい!ぜひ!」
その夜、二人が向かったのは、個室のある少し薄暗い居酒屋。
先にビールで乾杯する。
「あれ、他の子は来ないんですか?」
「うん。ちょっと遅れてくるみたい。先に始めてよっか!」
咲は、そう言ってにっこりと微笑んだ。
その笑顔は、かつてあやめが自分に向けた、あの太陽のような笑顔と全く同じだった。
そして、彼女のバッグの中では、スマホの録音アプリが、静かに作動を開始していた。
テーブルの下で、彼女の指が、ある男にメッセージを送る。
『今から連れていきますね。例の、三万円の子です』
灰色の金曜日は、終わってなどいなかった。
今度は、彼女自身が、その連鎖の一部となって、回り続けるのだ。
永遠に。
『灰色の金曜日』 志乃原七海 @09093495732p
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