国家が霊を認めた日から始まる、静かで残酷な怪奇譚

「霊は存在する」と国家が公式に認めた世界。
と冒頭にあって、「よくある怪談」では終わらないことが分かります。

本作は、霊災対策が国家事業となり、除霊師が制度として組み込まれた現代日本を舞台にした、徹底的にリアリズムを積み上げたダークファンタジーです。

特に印象的なのは、
「死にたくないという思いが強いほど、人は悪霊になる」
という世界の法則。

善人であっても、家族を想っても、
その“未練”が悪霊化を招いてしまう。
この設定が、単なる勧善懲悪ではない、重く静かな恐怖を生んでいると感じました。

主人公・晴北成道は、
恐怖を否定せず、「怖いからこそ準備をする」少年。
彼の冷静さと優しさは、この過酷な世界を生き抜くための覚悟として描かれます。

一方で、瑞月が抱える「自分の願いが、母を悪霊にしてしまった」という後悔は、
この作品が持つ最大の痛みであり、核でもあります。

現代×学園×除霊という枠組みの中で、
静かに、確実に、心を削ってくる作品でおすすめです!

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