神崎が正しい

(神崎=本編に出てくる編集者の名前。カクヨムでご活躍されている同名の紳士淑女の皆さんとは無関係です)

 作家のくだらんこだわりだの、わが魂の発露など、不要なんです。
 いや、あってもいいよ。
『それが売れるものならばね』

 神崎は云う。
 自分の為だけに自分の作品を書くな。読者が求めるものを読者の為に書け。
 三人称をやめて一人称にしろ。
 主人公の性別を変えろ。
 タイトルを大長文にして、「ハーレム」と入れるんだ。

 作品は”読者の物”

 それがお前が閉じこもっている独りよがりの世界からの「卒業」だ。

 ――正しいんじゃないでしょうか?
 あくまでも、神崎個人の目線からは。

 刺さる作品よりも売れる作品を。売り上げが一定数見込める作品を、切れ目なく世に出すこと。
 それが神崎くんのお仕事です。
 可愛い子が頬を染めたイラストと、魔法の言葉「ハーレム」が表紙にあれば、まず安全牌。

 しかしだ、神崎。
 売れる作品には、読者のことなんか知ったこっちゃない作者のくだらんこだわりの塊りと、魂の発露があるものなのだ。
 それを彼ほどに知っている者も、実はいないのだろう。

 こちら、ちょっとしたご縁があって拝読させてもらった作品ですが、まさか、
「ニヒヒッ♡」
 と笑う天然ドSのヒロインとの丁々発止から始まって、全てのラノベの書き手の心を射貫く、地獄の展開にもつれ込むとは。


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