あしながおじさんのソナタ

 孤児院で育った女の子が、命をたすけてくれた「お兄さん」に送る手紙。
 となれば、ウェブスター「あしながおじさん」を想い浮かべない人はいないだろう。

 お兄さんは軍人で、普段は戦場にいるために、滅多に逢いに来てくれない。
 その代わりに少女リゼットは、「大好きなお兄さん」に毎日のように手紙を書くのだ。

 孤児院にたまに来てくれる時のお兄さんは凛々しい軍服姿で、リゼットにちょっと声をかけては、忙しそうにまた何処かへ行ってしまう。

 将来の職業を考える年齢になったリゼットは朗読士になろうと決意して、王宮での試験を受ける。
 王女のための朗読士になりたいのだ。

 王宮には夢のように美しい王女さまがいて、リゼットに好きな人はいるかと問い、将来、王女の夫となる人の写真をリゼットに見せてくれたりする。


 一万字あるが、流れるように軽やかな筆致ですいすいと最後までひと息に読ませてくれる。
 九月ソナタさんの文章には、小枝を振り回して小川のほとりを散歩しながら歌っているような、自然光の明るさと伸びやかさがある。

 少女が読むものとしても、大人になったかつての少女が読むものとしても、誰もが楽しめる素敵なお話だ。