盲目のピアニスト

先天性の視覚障害を持つピアニスト、水瀬 響。彼の世界は、音と感触で彩られていた。しかし、彼の心には、決して埋めることのできない空白があった。
そんな響の元に現れたのは、才能の壁にぶつかり、ピアノを諦めようとする女子高生、佐藤 莉子。彼女との出会いは、響自身の閉ざされた心を少しずつ開いていく。
『音』を失いかけた莉子に、響が示したのは、海辺の小さな町に暮らしていた盲目の漁師の存在だった。楽譜も読めない漁師が奏でる、自由で荒々しい海の音。それは、完璧な演奏とはかけ離れていたが、聴く者の魂を揺さぶるものだった。
莉子は、響と漁師の音に触れることで、自分自身の『音』を見つけ始める。そして響もまた、莉子を通じて、これまで見えなかった自身の音楽の可能性、そして、人生の新たな『色』を見出していく。
これは…続きを読む