第44話 思いがけず

 様々な場所でのオフィスJKMの悪巧みを止め、制圧した形になったアケビたち。



 アケビは、遅れて出勤したところ、ヤンヌにヤヅキ解体に来るよう連絡があり、移動した。


「すみませ~ん、遅刻したアケビがただいま到着しました~」

「アケビさん、奥に進まれてくださ~い」


 ヤンヌが返事をしてきた。どんな小言を言われるのだろうと、気になるアケビ。

 アケビの姿が見えると、ヤンヌが思いの外、強い力でアケビの両腕を掴んだ。


「アケビさん!仕事、取れました!」

「はい?あ、経理の仕事ですね」


「違います、パワードスーツの仕事です!」

「あ~、アタシがどこかの現場に行って、作業するってことか」


「それも違います。パワードスーツの修理等、調整依頼の問い合わせが、ヤヅキ解体にすごく来ています。内容としては、アケビさんの動画が元となっていて、琉金物流倉庫を経由して、ヤヅキ解体に問い合わせがあり、ヤンヌ産業が応対する形です」

「そう言われましても、アタシは、カスタムAIに任せただけですよ」


「そのカスタムAIを育てたのは、アケビさんでしょ?今から、他の人が同じものって短時間で作り上げることは出来ないのです。需要が生まれた以上、供給して、その代金を頂くのは商売となります。そうです、ワタシたちヤンヌ産業は、お客様のご要望に答えていけますよ」

「あれが、ですか?」


 そこへ、ハッサクがやってきた。


「アケビさん、作った当人は大した事ないと思っていても、他からすれば、その代金支払っても構わないことなんだよ。誰にでも出来ることではない。せっかく会社作ったんだ。どのくらい続くか分からないにしても、まずは、その問い合わせを見てみてはどうかね?」

「まず、見てみませんか?かなりの量が来てます。中には、パワードスーツの実技指導をブンタンさんと二人でお願いする内容もありますよ」

「あの、分からないのですが、昨日の倉庫にいた客が問い合わせたってことですか?」


 黙っていたブンタンが、解説する。


「あのね、アケビさん。多数の人がコンピュータネットワーク上に動画を載せてる。さらに、あの事故の経緯いきさつ動画が公開されていた。真相を知っているのは、ここの4人。それと、エアバイク」

「あのシステム、やりやがった!アタシの許可取らず、勝手に!……ま、いいか。オフィスJKM解体に繋がるし」


 ヤンヌが、慌ただしく動いている。


「アケビさん、ワタシが管理・運営していきますので、少しずつ作業日程を組んでいきます。仕事しなきゃ生活出来ません。出来ることから、やっていきましょう」

「それなら、先日の換金したお金でコンピュータを買います。レンタルオフィスの契約を数ヶ月延ばさないと」


 ハッサクが、割り込んだ。


「それなんだが、ウチのブンタンも関わってくる話だ。ヤヅキ解体の2階は物置になっている。狭いが場所を確保するんで、ウチの店舗を借りる契約をしてみらんかね?格安で構わん。ウチの経理もみてもらわないといかんからな」

「爺ちゃん、面白くなってきたね!」


「社長と呼ばんか」

「そう言われても、やっぱり呼び慣れてるし、"爺ちゃん"で良いじゃん」



 翌日から、パワードスーツの着たアケビとブンタンが、ヤヅキ解体の2階を片付け、廃棄処分し、十分な広さを確保できた。そこに改めて、ヤンヌ産業という会社を明記し、活動が始まった。

 ヤンヌ産業は、当面、白いパワードスーツのシステム上書き、改修を主に行い、人員を派遣し、パワードスーツを装着した状態での動き方指導といった講習会も行なった。


 その間にも、ネットワークではアケビの活躍動画が広まり続け、ヤンヌ産業への問い合わせは増え続けた。


 妙に需要が高まりすぎて、アケビはパワードスーツの歴史を調べ、自分で電子部品の修理も出来るよう、自宅のカスタムAIを使って調査を始め、同時に知識と技術も独学で学んでいる。



 ある日、両手を頭の後ろに組み、コンピュータの前で何やら考えているアケビの姿があった。そこへ、ブンタンが声をかける。


「アケビさ~ん、お悩みですか~」

「あ~、ブンタン。修理依頼があるんだけど、手持ちの部品じゃ大きさが合わなくて。小型で、同じ性能のある物がどこかないかなって」


「そういうのこそ、通販じゃないの?」

「それがさ、通販の画面と表記が違うことが多くて、現物見られないかな、って」


「アーケード街に専門店街あるから、そこならあるんじゃないの?」

「え、ブンタン知ってるの?案内してくれない?エアバイクで乗せてくから、一緒にさぁ~」


「なにそれ、え、デートのお誘い?」

「デート?ブンタンが、そう思うんなら、デートするかい?」


 顔を赤くするブンタン。


「そう言われると、緊張してきた。ボク、普段作業着しか着ないから、正装持ってない」

「作業着でいいじゃん。そういう店に行くんだし」


「だって、アケビさんとデートだよ!このままじゃ~、ちょっと~」

「普段通りで、いいでしょ」


「え~、格好つけさせてよ」

「ブンタン、この野郎、そのままがいいんだから、着飾るな」



 数日後、エアバイクに乗って、大規模なアーケード街に向かう、アケビとブンタン。いつも通りの格好で、普段通りの会話をして、ようやく落ち着ける日々を過ごせるようになった。

 たまには、嫌なことを思い出すけど、話せる仲間があり、前向きな話し合いが出来ること。特別なことはなくても、当たり前と思えることがやり取り出来る相手と一緒にいるのは、充実していると言えるのであろう。



おわり

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アタシは、日々を楽しみたいんだ まるま堂本舗 @marumadou_honpo

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