世界観・文体・テーマ提示の完成度が非常に高い導入回
- ★★★ Excellent!!!
色を失った世界で、匂いだけを頼りに生きる主人公。
その喪失感と孤独が、静かで詩的な文章で描かれる序盤から、終盤にかけて一気に異常と恐怖へ踏み込む構成が見事でした。
胸に咲く花という美しくも不吉なモチーフと、それを「救い」に見てしまう主人公の感情が、この物語の歪さと魅力を強く印象づけています。
とくに、花を引き抜く男の存在は、優しさと残酷さの境界を曖昧にし、この世界が単純な善悪では語れないことを示していて秀逸です。
詩的でありながら生理的な嫌悪感も伴う、独特の読後感を残す一話でした。
この先、人に咲く花が何を意味するのか、続きを強く読みたくなります。