静・重・美の三拍子が揃った、非常に品格のある作品

滅びゆく城から始まるこの縁起譚は、派手な戦や奇跡ではなく、人の選択と諦観によって語られます。

姉弟の別れ、仇の家での日々、そして人柱という結末。
どの場面も静かで淡々としているのに、そこに積み重なる理不尽と悲しみが胸に重く残ります。

「成合御寮」という名に込められた意味が明かされた瞬間、この物語が“救いの神話”ではなく、犠牲によって成り立つ信仰の記録であることを痛感しました。

和風伝奇・縁起譚として非常に完成度が高く、この社にまつわる物語を、ぜひ続きを読んでみたいと思わせる序章です。

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社の御寮様

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