自分の痕跡を残したいという執念――


夜道に突如としてそれは現れた。

巧妙な襲撃になされるがままの被害者。

襲撃者の目的とは何か。そして、その結末は――



この作品のテーマは「存在証明」である。

誰もが自分の存在を知らしめ、無意味なものでないことを証明したいと考えている。

なぜ子孫を残すのか、なぜ1位を目指すのか、なぜ探求を進めるのか、最近ではなぜバズリたいのか。
これらの目的はすべて、つまるところは自分の証明である。

これは人間という枠組みすら超え、生物の興亡に関わる根源的な欲求なのだ。

有名作「メタルギアソリッド」シリーズに於いても、次のような名言が登場している。

――私は私の記憶、私の存在を残したい。歴史のイントロンにはなりたくない、いつまでも記憶の中のエクソンでありたい。


この作品はホラーである。
あまりに理不尽な仕打ちであり、残ったのはあまりに無慈悲な結果である。

しかし、これもまた上記の経緯を踏まえると違った意味を持ってくる。

襲撃者の切迫した自己表現が、読者の口をすぼめさせることだろう。