何気ない日常の積み重ねがあるから、その一言が輝く。そういった一面を、静かな雰囲気の文章の中で楽しませていただきました。素敵な読書体験を頂けました。
シンプルな言葉ではない「月が奇麗ですね」をもとに、関係性から答えを導き出す流れが秀逸ですね。はい。シンプルにこういう作風が好きです。
「月が綺麗ですね」=「I love you」ご存じ夏目漱石の有名な和訳。だけど、生憎今夜の月は刃のような三日月だった。そのせいで主人公の『私』は、それが愛の告白なのか、只の挨拶なのかの判断がつかない。 読書家の伊藤君がよもやこの逸話を知らないとは、考えられない。主人公がモヤモヤしながら伊藤君と二人で公園を歩く様子が、なんとも可愛らしくて微笑ましかったです。ちょっとお洒落でほっこりさせてくれる短編作品です。
夏目漱石の和訳を知っていても、知らなくても。それは、結局そういうこと。だって、二人で夜のお散歩中なんだから。
もっと見る