聖女と呼ばれても――少女は“薬師”であり続ける

 「ワタシは薬師です!」――そのまっすぐな言葉が、胸に深く残りました。

 『薬屋の聖女と屋根裏の守護騎士の調薬採取記』は、まるで森の中の光の粒のように、静かであたたかな物語です。ナナが作る薬は、単なる治療ではなく、“やさしさのかたち”なのだと、読むほどに気づかされます。亡き師匠の想いを受け継ぎ、弟を支えながらも「聖女」と呼ばれることを否定し、自らの手で道を切り開こうとするナナの姿に、静かな勇気をもらえるのです。

 ギルの無言の優しさ、ハタキ一閃の笑い、そしてフッサーさんの信仰にも似た熱意まで――すべてが不思議と調和し、読む者の心をふんわり包み込みます。

 “癒しと奇跡の調薬ファンタジー”、まさにその通りの、優しさの物語です。

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