ペットは家族同然ですから、
作者の悲痛な重いが、
ひしひしと伝わるエッセイです。
安楽死という選択は悲しいですが、
そのミニチュアダックスの女の子は、
20年8ヶ月を生ききったのでしょう。
調べたところ、
ミニチュアダックスフンドの平均寿命は14.9歳ですので、
20年8ヶ月は大往生と言えるでしょう。
しかしそのぶん、
犬との想い出の時間も長くなりますので、
死の悲しみが、より深く深く感じられるのかもしれません。
命あるものは、いつか亡くなります。
ですが、こうしてエッセイにその記憶を記録したことで、
作者の悲しみはいくぶん和らいだのではないでしょうか。
命とは?死とは?安楽死とは?
そんなことを改めて考えさせられる、
平明な文体で綴られた秀逸なエッセイです。
(作者の近況ノートに亡くなる2週間前の犬のお写真があります。合掌)
読んでいて胸の奥がじんわり熱くなって、何度も呼吸を整えながらページを追いました。犬と「生きる時間」を共有した人にしかわからない、あの濃密な幸福と苦しさが、丁寧な言葉で静かに積み重ねられていて……まるで自分の記憶の引き出しまでそっと開けられるような感覚でした。
愛しすぎるほど愛したからこその迷いや葛藤、その揺らぎごと抱きしめてくれるような文章で、読んでいる私まで寄り添われている気がしました。命って「正しさ」じゃなくて、共に歩んだ時間の濃さで語られるものなんだと、しみじみ考えさせられますね。
読み終えて静かに深呼吸したくなるような、優しさと痛みが同居した物語でした。きっと誰かの心の灯にそっと火をともす力を持った、そんな大切な一作だと感じました。。