見ることは、祈ること──宇宙の果てで出会う人間の光

 読後、静かに息をのむしかありませんでした。

 この物語は「観測」と「存在」という、科学の根幹に潜む哲学的問いを、あまりにも繊細に描いています。数式では捉えきれない“何か”──それを追い求めた蒼空と沙羅の姿は、まるで宇宙そのものが人間に問いかけているようでした。 圧倒的なスケールの中で、描かれるのは人間のごく小さな感情――信頼、孤独、そして希望。それらが精密な科学描写と共鳴し、やがて詩のような静けさを帯びていくのです。

 ページを閉じてもなお、“あちら側”と“こちら側”が静かに見つめ合うような余韻が消えません。理性と感性、未知と既知の境界を旅する物語。ぜひ多くの方に、この静かな衝撃を味わってほしいです。

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