「終端」を見つめる快感に酔いしれる

「宇宙膨張が突如停止した」という、天地がひっくり返るようなニュース。
そこから物語は始まります。

世界が凍りつく中で、天才天文学者・蒼空はまるで「その現象を待ち望んでいた」かのように、NASA本部へ駆け込む……。
壮大なスケールを一瞬で突きつけてくる導入が鮮烈でした。

また、蒼空の傍らに立つのは幼なじみの技術者・沙羅。
彼女は蒼空の奇抜なアイデアを唯一理解し、具現化できる存在。
ですが、二人は恋愛感情より以前に「知への共振」で結ばれている……そこがいいんです。

そして物語の中核を成すのが『ALIS』『ORB』という二つの目。
蒼空が構想し、沙羅が実装したこの装置ペアは「観測とは何か」をハードとソフトの両面から浮き彫りにし、終盤まで問いを牽引する魅力的なギミックです。

短編ながら再読欲をかき立てる一作。
何よりも、全7話・約1万9千字というコンパクトさにも注目です。
エピソードは「問い→観測→転位」のリズムで構成され、読了まで一度も中だるみを感じさせません。

科学ロマンと終末感を同時に味わいたい方に、全力でオススメします!
(スピンオフ作品でも『終端』ワールドが展開されています)

その他のおすすめレビュー

鵠 理世さんの他のおすすめレビュー172