ペンギンビーチ

水花光里

第1話うみぼうずのしま

 ぼくは、ペンギンビーチのペン太だよ。

 ぼくのじまんは、このサーフボードさ!

 たいようみたいなあかと、きんいろで、さいこうにかっこいいだろ!


 ぼくが、うみにでると、みんながみとれてみてる。

 ぼくは、ビーチいちばんのサーファーなんだぜ。


 だけど…、ひとりだけ、ぼくとおなじくらいうまいやつがいるんだ。


 ぼくたちは、あつさによわいから、れいぞうこにすんでいるんだけど…。


 となりのれいぞうこにすんでいる、マイケル。

 あいつにだけは、ぜったいに、ぜったいに! まけたくない!

 あかんぼうのころから、いつもきょうそうしてきたんだ。

 マイケルは、ぼくと、エリカがいっしょにいると、いつもじゃまをしにくる。

 マイケルはずるいんだ! エリカとおなじれいぞうこにすんでいるのに、いつもエリカをひとりじめしようとする。



 ぼくだって、エリカとなかよくしたいのに!

 エリカは、やさしくて、かわいいおんなのこなんだ。

 だから、みんなが、だいすきなんだよ。

 このペンギンビーチには、ペンのれいぞうこと、ギンのれいぞうこがあるんだ。

 でんしんばしらから、ちょくせつコードをつないであるんだよ。

 ひじょうようのバッテリーで、じかはつでんも、できるようになってるから、あんしんしてすめるんだ。

 かいごとに、まんなかが、せいひょうしつで、いつでもこおりが、じどうでつくられてるよ。

 うみでおよいだあとに、ばけついっぱい、こおりをもってきて、バスタブにいれて、こおりぶろにはいるとさいこうさ。




 あさになると、おとなも、こどもも、みんなうみにでてくる。

 おとなは、とおくのうみに、さかなをとりにでかける。

 ぼくのとおさん、かあさんも、はやくからさかなをとりにでかけた。


 よるになると、かごいっぱいのさかなを、ぼくのためにもってきてくれる。

 ぼくは、さかながだいすきだ! 

 ぴちぴちはねるさかなをまるごとのみこむと、のどがくすぐったくて、すごくおいしい!



 きょうも、じまんのサーフボードで、うみにでようかな。


 うーん、きょうもいいかぜがふいてる。ごきげんだぜ!


 ぺん太がビーチにでていくと、みんながあつまってくる。

 みんなが、きたいしていてくれるのが、すこしとくいなきもちがして、うれしくなる。


 さっそうと、じまんのボードにのって、うみにはいっていくと、また、ビーチが、ざわついているのにきがついた。

 ふりかえると、おんなのこたちがさわいでいる。

 マイケルがきたんだ。



 たまには、れいぞうこのなかで、おとなしく、休んでいればいいのに…。


 また、ぼくと、はりあうつもりなんだな。

 でも、マイケルがいるとおもうと、ぼくのなかで、むくむくと、やるきがわいてくる。


 ぜったいマイケルにはまけないぞ!

 ぼくは、いっきになみのうえにのりあげ、すいすいとすべっていった。

 ビーチで、みんながはくしゅしている。


 あらいなみは、バランスのとりかたがむずかしいんだ。

 でも、ぼくにかかれば、らくしょうさ!


 でも、このくらいは、マイケルもできるから、これでまんぞくしていられない!

 もっとすごいことしないと…、ぼくは、くるりとボードにのったままかいてんして、もっとおきにむかった。


 ペン太のけなみはだれよりもかがやいてきれいだ。

 そのけなみのいろとかがやきで、とおくからでもすぐわかるほど、きれいなペンギンだった。


 じまんのサーフボードも、たいようのひかりをあびて、あかいひかりが、はしっているようにみえる。


 マイケルも、まけじと、あとからつづいた。

 マイケルも、ペン太にまけないくらい、きれいなペンギンだ。ほんとうに、ふたりは、いろいろなめんではりあっている。


 ふたりはいつのまにか、ちかよってはいけないといわれている、うみぼうずのしまのちかくまできていた。



 このしまは、うみぼうずがすんでいる。

 ちかよってくるこどもを、うみのなかから、とがったいわで、つきさして、たべてしまうんだ!

 とくに、あめのひや、うみがくらいときは、みずのなかにかくれている、とがったいわにつかまるから、ぜったいちかよってはいけないんだ。


 ぼくは、このへんで、もどらなくちゃいけないとおもった。


 ボードのむきをかえていると、ちょうど、おおきななみがおこりかけている。

 いいぞ、あそこへいこう!


 すると、マイケルも、おなじことをかんがえていたらしい。

 ぼくのまえにわりこんできた。

「マイケル、あぶないよ! どけよ!」

「なんだよ、そっちこそよけろよ!」

 マイケルは、どかずに、そういいかえした。


「おまえが、ぼくのまえに、わりこんできたんじゃないか!」

「ペン太が、もたもたしてるからわるいんだ」

 ぼくは、プライドをきずつけられて、ムカッとした。

「なんだと! それじゃあ、ぶつかったら、マイケルのせいだからな、さっさといけよ!」


 ぼくは、こしをひくくさげて、スピードをあげた。

 マイケルも、なかなかはやい。

 でも、スピードをきそったら、だれにもまけない!


 ペン太と、マイケルのあいだは、みるみるちぢんでいた。


 なみはおおきくもりあがって、おそいかかってくる。

 すごいぞ! こんなのはじめてだ!  

 のみこまれないためには、なみのあたまぎりぎりまでのぼって…。

 どうやって、たたかうのか、かんがえただけで、わくわくする!



 おおきな、なみは、いまにも、のみこもうと、おおいかぶさってくる!

 ぼくは、なみのあたまぎりぎりのところで、ばらんすをとって、そとにでるチャンスをねらった。

 あせりはきんもつだ! あせったらなみにまけてしまう!


 ぼくは、すぐめのまえにいる、マイケルをちらりとみた。

 マイケルは、どうやって、のりきるつもりだろう?

 

 ぼくとおなじように、そとにでるチャンスをねらっているみたいだ。

 なみのあたまぎりぎりのところを、すべっている。



 なかなか、チャンスがない。

 ぼくなら、このまま、スピードをあげて、いっそのこと、なみのきれままで、すべりぬけられるかもしれないと、おもった。

 でも、それには、すぐまえにいる、マイケルがじゃまだった。


 もう、そろそろ、げんかいかもしれない。

 なみがつぶれかけている。

 マイケルも、あせっているのだろう、ごういんに、なみのうえにでようとしている。

 むりだ! あんなことをしたら、ひっくりかえるぞ!


 おもったとおり、マイケルはバランスをくずして、なみにボードをもっていかれてしまった。


 とびはねたボードは、おもいきりぼくめがけてとんできた。

 ぼくは、ボードをよけきれずに、ころがってしまった。

 ぼくのボードが、マイケルのあしにおもいきり、ぶつかたのがみえたが、どうすることもでいない。


 ボードをうばわれた、ぼくらに、なみは、つきでたおおきないわに、ようしゃなくたたきつけた。

 いたい!


 このうみぼうずのしまは、あちこちに、いわがつきでていて、おぼれたりしたら、たちまちきずだらけになる。

 つよいなみは、ぼくのじゆうをうばって、あちこちのいわにうちつけた。

 いたい! いたい!


 やっと、ボードをみつけて、いわからのがれた。

 マイケルも、どうやらぶじらしい。

 ぼくは、ホッとむねをなでおろした。


 マイケルは、バランスをくずしたことが、くやしいのか、

ぼくのボードがぶつかったことも、なにもいわず、ブスッ、としている。


 ぼくだって、あんな、おおきななみ、どうなっていたかわからないけど、エリカがみていたのに、こんなかっこわるいこけかたをしたのは、マイケルがこけて、まきぞえをくってしまったからだ。

 あやまるもんか!


ぼくが、うみからあがると、エリカがかけよってきた。

「ペン太さん、だいじょうぶ?」

「あんなのなんでもないさ」

 そういって、わらってみせたけど、ほんとうは、からだじゅうが、ぎしぎしいたくて、あちこちきずだらけだった。


 だけど、ぼくは、おとこのこだ!

 エリカに、そんなかっこわるいこと、しられたくない。

 だから、やせがまんをして、へいきなふりをした。


 エリカは、それをしってか、しらずか、けがのことは、なにもいわずに、ぼくをさそった。

「わたしね、あたらしいきょくをつくったの。いまからききにこない?」


 ぼくは、ないしん、たすかったとおもった。

 あしも、からだも、あちこちがいたくて、もういちど、うみにでるのは、つらかった。


 それに、エリカのピアノは、さいこうなんだ、うっとりして、てんごくにいるみたいな、きもちになる。


 うらめしそうに、ぼくをみる、マイケルを、よこめにみて、エリカといっしょに、ビーチをでた。


 エリカが、こんなふうに、さそうのは、ぼくだけだ。

 すごくとくいなきぶんだった。


 うみは、すこし、くらくなりかけ、なみもあらくなっていた。


 ゆうがたになるころ、ぼくは、エリカのピアノを、たっぷりたのしんだあと、ふたりで、ビーチのさんぽにでてきた。

 かぜは、すずしくふいて、きもちよかった。


 ビーチが、なんとなくさわがしい。

 なにかあったのか?


 マイケルに、いつもくっついている、テンが、そわそわと、おきを、みている。

 そのあしもとに、マイケルのボードだ!

「テンどうしたんだ? マイケルは?」

「あ、ペン太、たいへんなんだ! …マイケルが、うみぼうずに、つかまったかもしれない…」


 テンは、うわーん! となきだした。

 マイケルは、ぼくと、エリカが、ビーチをでたあと、また、うみにでていったらしい。


 どうしても、あのなみにのって、ぼくをみかえしてやる! と、いっていたという。


 しかし、もどってきたのは、このマイケルのボードだけだった。


「たのむよう! あんなところにいって、もどってこられるのは、ペン太しかいない! マイケルが、うみぼうずに、くわれるまえに、たすけてよう、うわーん、マイケルが、うみぼうずにくわれちゃうよー!」

 テンは、ますます、なきさけんだ。


「でも、うみがくらくなってるし、なみだって、あんなにあらくなっているもの、いくら、ペン太さんだって、あぶないわ。こんなときは、ぜったいに、うみぼうずのしまにちかよってはいけないって、いつも、おとなたちがいっているもの」

 エリカが、みぶるいしながら、おびえたようにいう。


「そうだよ、こんなひは、うみぼうずがでてきて、こどもをたべちゃうんだ!」

「…マイケルは、もう、うみぼうずに、くわれちゃったのかもしれない…」

「そうだよ、だから、ボードだけ、ながされてきたんだよ、ペン太だって、いったら、食われちゃうよ!」


 ビーチにあつまっているみんなが、くちぐちにいってやめろと、いった。


「うわーん」

 テンは、ますます、おおごえでなきだした。


 たしかに、みんながいうように、ぼくが、むりしていっても、マイケルをたすけるどころか、ぼくもえじきになりかねない。

 エリカがいったように、うみは、ひるまより、ずっと、おおきくなみだっているし、うみぼうずだって、こわいし、まったくじしんがなかった。


 しかし、テンは、わあわあ、なくし、…マイケルは、にくたらしいけど、いなくなるのは、いやだ! 

 いま、みすてたら、ぜったいあとでこうかいする!


 えーい! いちかばちか、やってみるしかない!

 ペン太は、ボードをもちあげて、うみにむかった。

「ペン太さん、あぶないわ! やめて!」

「とにかく、うみぼうずのしまをみてくるよ。もしかしたら、マイケルは、けがをしていて、ボードもながしてしまって、うごけないのかもしれない」

「でも、うみぼうずにつかまったら、たべられてしまうわ」

「だ、だいじょうぶだよ、つかまるようなまぬけじゃないさ」


 ぼくは、わざとつよがってみせた。 

「それに、うみぼうずのしまは、もう、あんなにちいさくなっているもの、もうじき、うみのなかに、もぐってしまうわ」

「だったら、よけいに、いそがなくちゃ! すぐかえってくるから、まってて」


 からだに、ちからをいれて、ふるえないように、ぎゅっと、ボードをつかんで、うみにはいった。


 なみは、ほんとうにあらいし、ひるま、ぶつけたあしも、またいたくなってきた。


 だけど、ここでくじけてはいられない!

 ひっしで、ボードにつかまりながら、うみぼうずのしまのちかくまできた。


このままなみに、まかせていたら、すぐに、いわにたたきつけられてしまうだろう。

 すこしも、ゆだんができない。

 それに、いつうぼうずが、でてくるかもわからない。

 みつからないようにしないといけないし、しんけいをはりつめて、あたりをみまわした。

 いまにも、ぱくりと、ひとのみにされてしまうかもしれないとおもうと、なきたいくらいこわい!


 だけど! ぼくはおとこだ! 

 こんなところで、なくわけにいかないんだ!

 うみぼうずなんかに、まけてたまるか! 

 ビーチいちばんの、サーファーのいじにかけても、なみにも、まけたくない!


 ひっしに、なみにさからっておよぎながら、マイケルをさがした。

 どこにもみあたらない…。

 まさか、ほんとうに、うみぼうずに、くわれたんじゃないだろうな…。


 うみぼうずに、おびえながら、しまのまわりを、とうまきにまわっていった。

 こんなところまできたのは、はじめてだった。


 しまのうらがわにまわってみると…、

 みつけた!

 マイケルは、しょんぼりと、いまにもしずみそうになっている、いわにこしかけていた。

「マイケル!」

 こえをかけると、びっくりしたように、ぼくをみた。

「ペン太!」


 ぼくは、しまの、いりえに、ボードにのってつっこんだ。

 ボードごと、いわのうえにのりあげて、なんとか、しまにはいれた。


「だいじょうぶか?」

「ペン太、どうしてここにきたんだ?」

「テンが、ながれついた、マイケルのボードをみて、しんぱいしてないてたぞ。マイケルが、うみぼうずに、くわれちゃう! って」

「あしを、けがしちゃって、およげないんだ…。ボードもながしちゃったし…」


「ぼくのボードにのれよ! いっしょにいこう! ふたりで、さっきのより、おおきいなみを、せいはしてやろうぜ!」


「だめだよ、もしこけたら、このあしじゃ、およげないから、むりだ。ペン太、ひとりでかえれよ」

「なにいってるんだよ。こけなきゃいいだろ、だいいち、このしまは、もうじき、うみにもぐっちまうぜ。そしたら、ほんとうにしんじゃうぞ! それに、はやくしないと、うみぼうずがきたら、くわれちゃうだろ!」

「うみぼうずなんか、いるもんか!」

「いるって、みんないってる!」

「いないよそんなもの、みたこともないし、こわがらせて、このしまに、ちかづかせないようにしてるだけさ。おれは、うみぼうずなんて、こわくないね!」


 まったくにくたらしいやつだ!

 たしかに、だれも、みたことはなかったかもしれない…。 

 だけど、そういいきる、マイケルは、おとなだなあ、と、すこし、かんしんした。

 なんだか、じぶんが、ガキにおもえてきた。


 いや、いや、こんなことでかんしんしているばあいじゃない。

 なんとしても、マイケルを、つれてかえらなければならないんだから。


「じゃあ、マイケルは、なみがこわいんだ。だから、うみぼうずに、くわれたほうがいいと、おもっているんだ」

「うみぼうずなんか、いないっていってるだろ! おれは、ビーチいちばんの、サーファーだぞ、なみがこわいわけないだろ!」


「だったら、いこうぜ! だけど、こんどは、ぼくのうしろだぜ。かりに、ビーチいちばんが、おまえでも、けがにんだからな」

「わかったよ、おまえのうでまえを、みてやるよ。だけど、こけるなよ。もし、しんだら、おまえのせいだからな」

「まかせとけよ! ちゃんと、いきたまま、おくりとどけてやるよ」


 ふたりは、ひとつのボードにのって、うみにとびだした。

 おおきななみが、まるで、うみぼうずのように、きばをむいて、ふたりにおそいかかってくる。


 ペン太は、ひっしで、バランスをとった。

 ふたりのりだから、むずかしいと、おもっていたけど、いがいにも、ちょうしがいい。

 まるで、ひとりでのっているみたいに、タイミングが、ぴったりだ。

 いや、それいじょうだった。ひとりのときより、ずっと、あんていかんがある。


 さすがは、マイケルだ! バランスのとりかたがうまい。

 なんか、マイケルが、きらいじゃない、きが、してきた。

 うしろを、ふりむくと、マイケルも、しんけんな、かおで、なみをみすえている。

 ちらっと、ペン太をみてうなずいてみせた。

 マイケルも、ペン太と、おなじきもちでいるみたいだ。


 しかし、おおきな、なみだ! このままでは、なみに、のみこまれてしまう。

 きばをむいた、おおなみは、おおきく、あたまをもちあげて、ふたりのうえに、おおいかぶさろうとしている。


 ここで、なみに、のみこまれてしまったら、ほんとうに、マイケルがたすからないかもしれない。

 うみのなかは、あちこちから、とがったいわがつきだしていて、いまにも、かみくだこうとしている。


 これにぶつけられたら、ぼくだって、どうなるかわらない。

 きんちょうがはしる。

 すこしのしっぱいも、ゆるされなかった。


 それに、バランスは、とれても、ふたりのりでは、スピードがでない。

 かんがえているうちに、とうとう、なみに、つかまってしまった。

 なみは、おおきく、ふたりのうえにおおいかぶさってくる。

 なみのなかに、のみこまれてしまった。

 ぜったいせつめいだ!

 なみがつぶれたときには、あのいわのえじきになる。


 なんとかして、なみのなかから、にげださなくては。

 でぐちを、さがさなければならない!

 それも、びんそくに、やらないと、おおきくちょうてんにたっした、なみは、すぐにつぶれる。

 そのまえになみのなかから、でなければ、ビーチにもどることは、できないかもしれない。


 ボードは、なみの、くちのなかを、すすむ。

 なみは、すごいちからで、ボードをひっくりかえそうとする。

 ふたりは、かたあしにちからをいれて、いっしょに、いしょうけんめい、ふんばった。

 ぼくらは、ちからのかぎり、ひっしでくいとめた。


 まけてしまいそうだ! それでも、ひっしにふんばった。

 マイケルの、いのちが、かかっているんだ。まけられない!


 そのとき、めのまえに、みえた!

 みずだけのなかで、ほんのすこしだけ、そらがみえる。


 なみのあいだに、ほんのすこし、きれめがある。

 あれをひらけば、なみのうえに、でられるかもしれない!


「マイケル、いくぞ!」

「オー!」


 ぼくのかけごえに、マイケルのこえが、かえってきた。

 ぼくの、かんがえていたことが、わかっていたらしい。


 ぼくは、いま、すごく、マイケルがすきだとおもった。

 おなじきもちで、なみと、たたかっている。

 おたがいに、かんがえていることが、だまっていても、つうじている。

 それは、おなじように、なみのことを、しっているからなんだ。

 

 ほかのやつでは、きっと、こんなふうにうまくいかない。

 マイケルといっしょなのが、すごくあんしんできた。

 ふたりでならできる! ゆうきをふりしぼって、なみのきれめを、めがけて、とっしんした。

 ザッバーン!

 ボードは、なみのあたまのうえに、とびだした。


 いままで、おもくのしかかっていた、てんじょうはきえた。

 なみのそとに、でられたんだ!

「やった! やった! やった!」


 おおきななみは、いっきに、ぼくらを、ビーチへおしながしてくれた。

 そのまま、ボードで、ビーチにすべりこんだ。


「やったな!」

「うん、やったぜ!」

「やっぱり、ペン太は、ビーチいちばんのサーファーだよ。ほんとに、あのでかいなみを、せいはしちゃったんだもんな」

「ちがうよ、マイケルがいっしょだったから、できたんだよ! マイケルは、バランスのとりかたが、すごくうまくて、のりやすかった」


「ペン太さん!」

「マイケルー!」

 エリカと、テンが、かけよってきた。

「テン、しんぱいかけて、わるかったな」

「うわーん、マイケルが、うみぼうずにくわれなくてよかったよー!」

 テンは、マイケルにしがみついて、なきじゃくった。


「うみぼうずなんて、めいしんさ、そんなものいなかったよ! な、マイケル」

 ペン太は、さっきの、マイケルのことばを、じぶんでいって、すこし、おとなになったきぶんだった。

 マイケルも、わらいながら、うなずいた。


「うん。それよりも、もっと、すげーやつがいるよな、ペン太!」

「いるいる! ぼくらは、そいつにかったんだよな!」

「そうだよ、うみぼうずなんか、めじゃないぜ!」

 ふたりは、まんぞくかんでいっぱいだった。


「ペン太、ひるまは、わりこんで、ごめんな…」

「ぼくのほうこそ、ぶつかってごめん。おまえ、あのとき、ボードで、あしをうったんだろ、だいじょうぶか?」

「それだったら、おたがいさまさ、ペン太だって、いわにぶつかってただろ」


「だけど、すごかったな!」

「うん。あしがなおったら、こんどこそ、ひとりでのってやるぞ!」

「マイケルは、またあそこへ、いくつもりなのか、やめとけよ、あそこは、あぶないぞ!」

「うみぼうずのしまより、もっとおきに、あぶなくないばしょをみつけたんだ、こんど、とくべつに、ペン太も、つれてってやるよ」

「ほんとか! よし、けががなおったら、またきょうそうしようぜ!」


 だれかがつくりあげた、うそを、おそれて、なにもできなくなってしまうより、しんじつを、たしかめるゆうきを、もつことのたいせつさを、かみしめた、ペン太だった。


 うみぼうずのしまには、なにもいなかった。

 きっと、とがったいわと、あらいなみで、こどもたちがちかづくと、あぶないから、つくられたうそなのだろう。


 きみのまわりでも、おかしいな、とおもうことが、あるかもしれない。

 もし、きがついたら、そのりゆうを、かんがえてみよう。

 もしかしたら、だれかが、おもしろがってつくった、ぜんぜん、いみのないでたらめかもしれない。


 こわがったり、まもるひつようのないことだったら、きみなら、どうするだろう?

 こんかいは、ペン太のゆうきで、マイケルをたすけることができた。

 みんなが、しあわせにすごせる、そんなほうほうを、かんがえてみたいね。



                 おわり



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