ホラーファンが喜ぶネタ満載! モヒカン頭の悪魔との契約。その結末は?

 短編ながら、ものすごい広がりの感じられる作品でした。
 
 主人公の前に、「峰岸」と名乗る存在が現れる。モヒカン頭でオネエ口調で喋る峰岸は、人間ではなく「悪魔」や「ランプの魔神」などと呼ばれる存在。

 かつて願いを叶えた代償に、峰岸は「世界」を渡すようにと迫ってくる。

 本作はホラーファンがニヤリとするような趣向が随所にちりばめられていました。

 まず、峰岸を召喚するキーアイテムとなっていたものが、「パズル」だったという点。これは「ヘルレイザー」の「ルマルシャンの箱」だな、とホラー好きの心をまずくすぐってきます。

 そして峰岸が「魂」ではなく「世界」を要求してくる感じ。ゲーテの「ファウスト」に出てくるメフィストフェレスも連想しますが、どちらかというと初代ウルトラマンの「メフィラス星人」の「地球をあげると取引する」話を強く思い出させられます。

 こうしたホラーファンが喜ぶネタを散りばめつつ、峰岸のどこか憎めないキャラに心をぐっと掴まれました。
 果たして、この峰岸との「契約」はどのような結末を迎えるか。

 主人公の抱える過去。峰岸の思わぬ特性。「世界」を奪われることの意味。
 物語はテンポよく進み、二転三転と予想外の展開を見せてくれます。

 そして最後に見えるヴィジョン。壮大かつドラマチックで、強烈なカタルシスをもたらしてくれました。
 一万字足らずの短編ながら、映画一本分くらいのストーリーを楽しんだ後のような満足感がありました。
 
 まさにホラーエンタメと呼びたくなる、怪奇と幻想とロマンに満ちた一作でした。

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