第3話「仮婚約と純潔の誓い」現世は女性でも、前世は男で記憶も男が支配です。これってなし崩し婚約されたって事
辺境伯セドリックからの突然の申し込みにより、“仮婚約”という妙な関係が始まった。
……しかも今日から同居スタート。展開が速すぎない?
セドリックは、がっちりした肩幅に鍛え抜かれた体躯。黒髪にブルーの瞳、顔は確かにイケメン枠。
けれど女性を寄せつけない威圧感があって――正直、もし本当に婿にするなら理想的……いや、ちょっと怖い。
そんな男が案内してくれた部屋は――
「この部屋が君の部屋になる。日当たりがよく、庭の眺めもいい」
……やけに壁紙とカーテンが新婚仕様なんですけど!?
色味とか柄とか、さりげなく“ラブ感”全開に仕上がってるのは気のせいですかね?
「あの、隣の部屋って?」
「俺の寝室だ。君に何かあれば、すぐ駆けつけられる」
おい待て、それ完全にフラグ台詞だろ。
「何かあれば」の“何か”が、こちらの想像とは絶対ズレてる予感しかしない。
私は慌てて距離を取りながら呟く。
「……そもそも、私で嫁げるんでしょうか?」
セドリックが首を傾げる。
「エレノア、何か心配なことでも?」
「いや、その……婚約者って、本来はもっとこう……男女の心が通い合って、甘くて、ドキドキして……」
「では、手順を踏もう。まずは好意から育てていこう」
即答。真顔。圧。
なんだこのロジカルすぎる恋愛計画。逆にホラー味が出てきたぞ。
私は仮婚約の条件をきっちり提示していたはずだ。
純白死守。寝室は別。触るな、迫るな、愛の告白なし。
つまり夜這いも接触も禁止。それが契約条件。
そして今のところ、セドリックは驚くほど忠実に守っている。
ご飯のときはきっちり正座。読書タイムは時計きっかり1時間。
寝室のドアは必ずノック。距離感まで律儀。
……これ、逆に逃げ場がないやつじゃないか?
「セドリック……優しすぎるのも、時に暴力になるって知ってます?」
「では、どう接すれば?」
「いや……もう少しこう、俺の心の“男の部分”に配慮というか……」
「……男?」
しまった――地雷ワードを踏んだ!
「な、なんでもありません! ええ、いい天気ですね!」
こうして私は、まだ誰にも明かせない“中身は前世社畜リーマン♂”の秘密を抱えたまま、
“純白死守”と“仮婚約”という不安定な新生活へ突入するのだった。
――負けられない。この尊厳だけは。
たとえそれが、俺の“嫁”であるはずの男(辺境伯)に対してでも!
「辺境伯の婚約者コーディネート大作戦」
同居初日の昼下がり。
セドリックがやたら真剣な顔で言った。
「エレノア、今日は服を選んでもらう」
「えっ、服? なんで?」
「君に似合うものを揃える。屋敷内でも、外でも、常に美しくあってほしい」
いや俺、中身おっさんだから! 婦人服なんてわかるか!
と、そこでノックの音。
開けると、すでに屋敷の応接間に洋服屋がスタンバイしていた。
⸻
◆ 店員視点
「辺境伯様の婚約者にお似合いの一着を……」
そう呼ばれてやってきたが、予想より依頼主の目が本気だ。
しかも指定が細かい。
「胸元は控えめ、裾は動きやすく、しかし品のある長さで。色は淡いブルーか白。……フリルは多めに。だがピンクは厳禁」
――いや、完全に恋人に着せたい服リストじゃないですか。
⸻
◆ エレノア(心の声)
ちょ、待て。なんでそんな細かく決めてんだよ!? 婦人服に関してプロ級か? 辺境伯の必須スキル?
ていうかフリル多めって……俺、似合わねえよ!
「フリルはいらんぞ! ピンクもやめてください!」
「淡いブルーがいいな」
……聞いてない。完全に聞いてない。
⸻
試着を半ば強制され、鏡の前に立たされる。
「……似合う」
セドリックの顔が真剣すぎて、逆に恥ずかしい。
「ほら、腰のラインが美しい」
いや、腰のラインとか言うな。こっちは前世男だぞ!
⸻
◆ 店員の心の声
(……これ、完全に惚れてますね辺境伯様。お幸せに)
⸻
その後、気づけばワードローブが淡いブルーと白の服で埋まっていた。
純白死守のはずが、服から先に“俺色”に染められている気がする……。
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俺が令嬢で何が悪い。最強夫婦で国家も陰謀もぶっ潰す! 夢窓(ゆめまど) @makomakorin
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