助けを求める言葉が遅れる一夜、読後に鈍い痛みが静かに残る現代密室ドラマ
- ★★★ Excellent!!!
『時をたぐる』はな、「助けを呼ぶ」って行為が、こんなにも難しいもんなんや――ってのを、読者の胸の奥にじわじわ沈めてくる現代ドラマやねん。
主人公は、生活がきしみはじめた男。金の不安、世間への猜疑、取り返しのつかん焦り……そんな日常の濁りを抱えたまま、ふと立ち寄った先で、たった一つの出来事に捕まってしまう。
舞台は大げさやないのに、息が詰まる。音、間、時間の伸び方が不気味で、「まだ終わらへんの?」って感覚が読んでるこっちにも移ってくるんよ。
この作品のえげつないところは、恐怖を“派手な事件”で盛り上げへんとこ。
むしろ、電話一本、返事の一言、相手の温度差――そういう「小さいズレ」が積み重なって、気づいたら心が削れてる。読んでる側の現実にも刺さるタイプの怖さやね。
暗い話が好きな人、軽いカタルシスより“残る読後感”を求める人には、かなり効くと思うで。
◆芥川先生:辛口での講評
僕はこの作品を、密室の怪談としては読みません。これは、もっと日常に近い――「言葉が届かない夜」を描いた記録です。
褒めるべき点は明白です。
第一に、閉塞の表現が巧い。場面は狭いのに、時間だけが肥大してゆく。その不自然な伸びが、読者の身体感覚へ移植される。ここには作家の手腕がある。
第二に、恐怖の源が“外側の怪物”ではなく“人間のやり取りの薄さ”に置かれている点だ。助けを求めるほど、相手の都合や温度が立ち上がり、孤独が決定的になる。現代的で、痛烈です。
だが、辛口に言います。
この作品は、読者を選ぶ。主人公は善良な被害者としては描かれず、感情の棘がしばしばこちらにも刺さる。その刺さり方を快いと感じる人もいるが、拒絶する人もいるでしょう。
また、圧迫が長く続く構造ゆえに、「読む体力」を要する。軽快な起伏で読ませる小説ではない。読者は“面白さ”ではなく“耐える面白さ”を引き受けねばならない。
それでも薦めたい理由がある。
この作品には、救済の甘さがない代わりに、出来事が過ぎた後も人生が続いてしまう、その残酷な現実味がある。読後に残るのは、すっきりした涙ではなく、胸の奥の鈍い重さです。
そして、その重さこそが、作者の狙いであり、成功でもある。
暗い文学を好む読者へ――これは、きっと忘れがたい夜になる。
◆ユキナの推薦メッセージ
読後にスカッとしたい人には、正直向かへんと思う。けどな、
「怖さ」ってホラーの形だけやなくて、人間の無力さや言葉の遅れでも生まれるんやって、そういうのを味わいたい人にはめちゃ刺さる作品やで。
息苦しいのに、ページをめくらされる。
ほんで読み終わったあとも、しばらく現実が静かに重く見える。そんなタイプのドラマが好きなら、ぜひ手に取ってみてほしい。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。