最近プロットでこねこねしていた話
秋犬
半プロッター系パンツァー、らしいです。
今回は尾岡れき@猫部さんの自主企画に参加しました。
【😽書き手さんに質問】あなたはプロッター? パンツァー? それともおぱんつ履いてるか教えてもらって良いですか?
https://kakuyomu.jp/user_events/16818622174368233488
プロットの作り方がメインの質問企画だと思うので、最近プロットでこねこねしていた話などしたいと思います。ではどうぞー。
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①あなたはプロッター(緻密設定派)? パンツァー(感覚執筆派?) それともおぱんつ履いてる(どちらでもない)か教えてもらって良いですか?
基本は緻密に設定を作るのが好きですが、どうにも書きながら設定が降りてくることが多いので本質的にはパンツァーなんだと思います。どうでもいいんですけど、このパンツァーって戦車って意味じゃなかったんですね。ずっと戦車みたいにガツガツ書く人って意味だと思ってました。
このようなパンツ人間でありますが、創作においてはパンツを脱ぐことが必要になってきます。そもそも創作って心のパンツを脱ぐことが大事なんですよ。それにみんなどうせ男も女もパンツを脱いでる描写のほうが好きだし……。
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②あなたが書き始める前に準備すること(プロット作成等)教えてください。
長編を書くときは章設定をしてイベントを決めます。「ここで何々をする」くらいのメモをひたすら繋げていって、そのメモの上に上書きする形で本文を書いていくことが多いです。それが抽象的すぎて後で「未来の自分何とかしてくれ」という過去の他力本願な自分を殴りたくなるときはあります。3000字程度のパートの内容に「現実に落ち込む」しか書いてなかったりする時とかですね……。
そんな時のために「思いついた情景をその場で書く」ことができるよう訓練もしました。「ふらっと短編」というコレクションがそれです。
【ふらっと短編コレクション】
https://kakuyomu.jp/users/Anoni/collections/16818622173725325530
これは何もないところから登場人物や情景、ストーリーをズバっとまとめる訓練みたいなものです。2000字程度の話をアドリブで書いています。これが出来ると、長編で困ったときも何とかなります。基礎体力みたいな奴です。狙った獲物は逃さない。
でもたまに短編でもしっかりプロットを書いて作品を練っていく時があります。そんなときはどうやっているのか、大体の工程を書いてみます。
【ネタ出し編】
資料を取り寄せてから書きたいことを考える、みたいなことはあんまりしなくて書ける範囲で書くことを基本的にしています。そういう訳でネタ出しの段階では基本的に今までの知識の棚卸し作業のようなことをします。書く段階になって必要な資料が出てくればそこに当たる方式です。
それから思いついたネタをいくつか組み合わせて、脳内でガーッとストーリーをシミュレートします。短編小説の場合、まず考えるのは山場とオチです。とにかく山場の絵が一枚、あとはそれでどうなるかのオチ。この二つが出来たらそこからいろいろ逆算してストーリーが完成します。
これ、多分一番近いのは『映画大好きポンポさん』に登場するポンポさんの当て書き脚本です。ポンポさんは俳優の顔を見てシーンを作りますが、自分は一枚絵や印象的な台詞を頭の中で想定していく感じです。
【プロット作成編】
書きたい絵が決まったら、まずはそれを並べて数百字程度で文章化します。これがプロットになります。まだこの段階では思いついたことを書いているので、整合性やテーマ、文法の正誤などはあんまり気にしません。絵を並べきったら終了です。短編小説の場合は大体3~5枚の絵を並べる形になります。
並べたら熟成させる段階に入るものもあれば、新鮮なうちに書いておいたほうがいいものもあるのでその時その時で分けています。でも慣れないうちは絶対熟成させたほうがいいと思うので、プロットを寝かせる行程は挟んだ方がいいと思います。
最近ではプロットを寝かせる代わりに、ChatGPTに投げて「この話どう思うよ?」ってやります。ここでAIが想定以外の反応を返したら、この話自体なかったことにしたほうがいいと思います。めでたくAIが「それいいですね!」という反応をしたらそのまま進みましょう。そして「この作品のここを深めてほしい」という部分があれば検討します。いやあいい時代になった。
【プロット熟成編】
プロットを熟成させたら、アレンジを加えていきましょう。ポンポさんで言うところのジーン君の役割です。秋犬さんはこれを実際に書きながらやってしまいますが、慣れないうちはプロットを見ながら絵を動かして内容をいじるといいと思います。
いじる箇所は大体「導入と視線誘導」「オチのインパクト」などが多いです。特にオチのインパクトは大事にしていて、何種類か考えて一番しっくり来るものを選びます。また導入も大事にしていて、最初の数行でどうすれば読者を引き込めるかを考えます。
ただ秋犬さんはプロットの制作段階で飽きて本文を書き始めてしまうことが多いので、導入やオチの調整は書きながら考えてます。旅行で例えると大まかな目標や日程を決めて、後は現地調達で済ませるタイプです。
例えば大阪を旅行するときに「大阪に行って通天閣行ってたこ焼きが食べたい!」と思ったらとりあえず宿と新幹線だけ取って後は現地で何とかしよう、みたいな感じです。大きな目標以外の行動は現地で考えます。お土産を見てもいいし、現地のカフェを堪能してもいい。
昔大阪に観光で行ったとき、バスの時間まで暇になってしまったのでふらっと本屋に入って分厚い文庫本を買ってスタバでグランデサイズの何かを頼んで読んでたのが結構印象に残っています。大阪に行ったのにクライマックスはそれなのか、というのがちょっと面白いのですが適当な旅行だったのでそんなものです。
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③創作活動のなかでの赤っ恥体験を教えてください。
昔書いてた長編小説で、違うエピソードなのに2回同じエピソードタイトル使っちゃった。恥ずかしかった。えーん。
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④あなたの渾身の作品を教えてください。②の質問でどう準備したかも教えてください。
今書いてる連載ものはプロットの構築だけで半年かかったのでソレ、と言いたいのですが現在85万字ほど書いてようやく折り返し地点に辿り着いたところというヤバいものですので、完成したら出します。そういうわけで最近「プロットの構成らしい構成をした」という作品で上記の「プロットを熟成させた」例を書いていきます。
【硝子ノ森】
https://kakuyomu.jp/works/16818622175750534380
こちらは「月の光はレモンの香り」というエピソードタイトルで掌編を書くという企画に寄せて書いたものです。3400字と短い話なので、完成品を読んでもらってから以下を読むと味わいが変わると思います。またプロットの説明なので、以下を読んでから完成品を読むというのもいいと思います。
まず、ネタ出しです。実はこの案は三つ目で、ネタ出しの時点で二つの没が発生しています。最初はレモン畑で不倫する異世界恋愛系、二つ目は寄る辺ない若者が夜の街を彷徨うというものです。しかしどちらも絵がありきたりだったり月光とレモンが脇役になってしまったりとイマイチだったので没にして、「絵が強烈な作品」を求めました。
実は「レモンの香り」というワードで、ずっとあまんきみこの『車の色は空の色』に登場する「これは、レモンのにおいですか」という書き出しが頭をぐるぐるしていました。この話ではその後「いいえ、夏みかんですよ」と言われてしまうのですがそれだけ柑橘類の香りってやはり鮮烈な夏のイメージを与えるよなあ、とずっと考えていました。
そこで発想を逆転させて「夏を想起するものを冬に持ってくれば印象が強くなるのでは」と思って思いついたのが『硝子の森』の第一イメージです。とりあえずこのイメージをプロットとして書き出したのが以下のものです。
【プロット1】
常夜の国の手前に広がる硝子の森。ここでは「夜水晶」という特別な鉱石が採れるが、常夜の国に住む者でないと、夜水晶は発掘できなかった。百年に一度、人間たちは常夜の国へ女を差し出すことで夜水晶を手に入れていた。
嫁入りする神子は森の中の神殿で暮らしていた。光の届かない常夜の国へ降りるため、神子は視力を奪われていた。神子の幼い弟はこっそり神殿にやってきて、外の世界の話をする。神子は弟を大層可愛がった。
常夜の国へ降りる前に、神子は弟に「光が見てみたい」と呟く。困る弟に、吟遊詩人が「太陽の光を詰め込んだ果物はいかが」とレモンを手渡す。その日の夜、弟が神子にレモンを渡すと「とても香しい、これが光なのね」と神子は月光の元レモンに頬ずりをした。
翌日、神子は常夜の国へ降りていった。その後夜水晶は枯渇し、常夜の国への扉も閉ざされた。今でも森の入口には祭壇があって、今年最初に採れたレモンを備えるということだ。
おわり。
とりあえず「とっても寒そうな森」「冷たい月光の中で盲目の少女がレモンの香りで光を感じる」という絵は出来ました。これをとりあえずChatGPTに読ませて、気になる点を出してもらいます。今回は以下の意見を貰いました。
【ChatGPTからの意見】
常夜の国の性質や存在意義がやや曖昧
常夜の国がどれほど人間たちにとって重要だったのか(夜水晶の効能や価値など)をもう少し明示しても、神子の犠牲の重さが伝わるかもしれません。例えば「夜水晶は王都の灯りを支えていた」など、わずかな補足で深みが増します。
神子が視力を奪われる理由の補足
「光の届かない常夜の国へ行くから」というのは詩的ではありますが、儀式的、宗教的な側面もあるのか、もう一歩踏み込んでもよい気がします(例:神子は光を見ることを禁じられている、など)。
弟の年齢や立場の掘り方
「弟」はとても大事な役ですが、彼の性格や視点がやや薄めです。もし後にこの物語を長めにするなら、「弟視点の現在(回想)」「弟がレモンを届けに来る場面」などを加えることで、読者の感情移入が深まるかと。
指摘は以上になります。「せやなあ」という印象です。ここから指摘通り「常夜の国や夜水晶、硝子の森」の設定の強化と主人公である弟の踏み込んだ設定、オチの強化を加えたのが改訂版のプロットです。
【プロット2】
常夜の国の手前に広がる硝子の森。族長の息子アルメオは月明かりの下、石英の粒を踏んで神子である姉(名前未定)の元へ向かう。
ここでは「夜水晶」という特別な鉱石が採れるが、常夜の国に住む者でないと、夜水晶は発掘できなかった。百年に一度、人間たちは常夜の国へ女を差し出すことで夜水晶を手に入れていた。
嫁入りする姉は森の中の神殿で暮らしていた。光の届かない常夜の国へ降りるため、嫁入りする女は代々視力を奪われて、嫁入りする15歳までこの硝子の森で常夜の国に適応できるよう隔離されて育つ。アルメオは姉に会いたくて掟を破り、人目を忍んで夜間に神殿を訪れていた。
常夜の国へ降りる前に、姉はアルメオに「光が見てみたい」と呟いていた。アルメオは姉にレモンを「太陽がぎゅっと詰まった果物だよ」と渡す。「とても香しい、これが光なのね」と姉は月光の差し込む硝子の神殿の中でレモンに頬ずりをした。翌日、姉は常夜の国へ降りていった。
大人になったアルメオは族長になり、夜水晶の取引のため常夜の民と会う。常夜の民から「光の欠片」と称して乾いたレモンの皮をもらう。次の取引で、アルメオはレモンをたくさん常夜の国へ渡そうと決意する。
おわり。
前のプロットは弟が一度村に帰ってしまうので場面が途切れてしまいますが、改訂版では最初からレモンを持参することになっています。こうすることで硝子の森と神殿の印象が切れることなく読者に提示できます。見せるシーンを減らす決定をするのは、プロット段階で行うといいかもしれないですね。
また昔話風に語られていた前のプロットに比べて、改訂版では弟視点で統一することで姉の美しさをこれでもかというほど表現できます。姉が美しいと思ってる弟はいいですからね。
これもChatGPTに改訂版として投げたところ、ラストの「光の欠片」が唐突でもう少し設定や意味を追加したほうがいいというアドバイスをもらいました。また全体的に姉のキャラクターが弱いという欠点も指摘され、更にブラッシュアップの必要性が出てきました。
そしてこのプロットにもう少し設定を加えて、何だかんだとこねくり回したものが採用されて現在の作品の形になっています。完成版ではとある設定を追加して、ラストのレモンの皮の意味を大幅に変更しています。後は是非本編でお楽しみください。雨が降り止むまでは帰れない、って感じでよろしくお願いします。プロット段階で装着していたパンツが脱ぎ捨てられているのがよくわかると思います。
***
⑤プロットに悩む子羊へ一言!
プロットの書き方がよくわからない、という話を聞くのですが多分「何を書いたらいいかわからない」が本質だと思います。プロットはあくまでも作品の設計図であり、仕様が決まっているわけではないので最初のうちは自分にわかるように好きに書いたらいいのです(出版社へ企画を提出する際の話はまた別の話)。
何を書いたらいいのかわからないときは、ひたすらインプットしたほうがいいと思います。とりあえず名作と言われている小説を50冊読むとか、映画を50本観るとか、他人の短編小説を一週間で200本くらい読んでみるとか……。
割と冗談ではなく、そのくらいドカンと無節操に取り入れたほうがいいと思います。コンテストで受賞したいならば過去の受賞作品に当たるのもいいですし、アニメやドラマをガンガン観ていくのもいいですね。あと地味にリアルでの交流も大事です。どこにネタが落ちているかわからないので、人付き合いは(小説を書くという意味でも)大事にしたほうがいいと思います。
そういうわけで、とりあえず書きましょう。書くのが上手になりたかったら、書くしかないんです。書けなかったら、読むしかないです。後は踊ったり歌ったりもいいかもしれません。そんな風にして楽しく書いていけるといいですね。
おしまいっ!
※6/25追記※
プロットを捏ねる話をしたので、プロットなしで書く話も書きました。よければご覧ください。
【即興小説ノススメ】
最近プロットでこねこねしていた話 秋犬 @Anoni
★で称える
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