不老の監察と不器用な元隊長の──大陸父子バディ譚
- ★★★ Excellent!!!
新選組と聞いて
まず浮かぶ三人ではなく
監察、山崎烝と
二番隊長、原田左之助──
ふたりの〝はみ出した者〟に
光を当てた物語
禁断の薬〝仙変丸〟によって
山崎の身体は若返りつづけ
少年とも少女ともつかない姿に⋯⋯
その〝若さ〟は祝福ではなく
己の身体を
自分のものとして持てなくなる
〝呪い〟であり
幕末に流した血と密偵としての罪悪感を
いつまでも脱ぎ捨てられない
〝檻〟でもある
一方で、ぶっきらぼうで情に厚い原田は
その子供じみた姿になった相棒を
〝息子〟と名乗り
大陸の港町や河を渡り歩きながら商売を興し
珈琲や茶葉を武器に
新しい時代を生き抜こうとする。
刀を置いた侍が
帳簿とカップを手に
異国でなお〝戦い続ける〟姿が
たまらなく愛おしい──
血塗れの歴史と
不老という奇妙な恩寵。
そのあいだで揺れるアイデンティティと贖罪が
異国の風景や珈琲の香りとともに
静かに立ちのぼる一作です。
バディ物でもあり
父子物でもあり
旅物でもあるこの物語が
どんな終着点へ向かうのか──
続きの頁を捲る時間さえ
物語の一部だと感じさせてくれます。