灰の世界で孤狼が牙を研ぐ
- ★★★ Excellent!!!
<第1話から第3話を読んでのレビューです>
灰に覆われた地上と、地下に逃げ込んだ人類。終末世界の描写は冷ややかで淡々としています。義手や義眼、戦術AIといった要素は、荒廃した環境の中に滑らかに挿入され、無理なく世界観が入ってきます。アッシュという主人公は多弁ではないが、その行動とわずかな独白によって性格が輪郭を得ていきます。
戦闘シーンでは、金属の駆動音や灰を巻き上げる動作など、視覚と聴覚を刺激する表現が想像力を刺激します。AIとの掛け合いが、硬質な描写の合間に人間味を与え、緊張と緩和が巧妙に織り込まれています。
「空は、とうの昔に死んだ。」は、ごく短い表現ですが、世界全体の荒廃と喪失感を端的に示し、その後の描写の基調を一気に決定づけています。一瞬で暗い地平へ引き込む力。
物語の進展と共に、AIアリアの存在が単なる補助ではなく人格を帯びた存在として立ち上がり、さらに地下都市や女帝リヴィアの登場へ。終末世界における人間と機械、都市と個人の関係がどのように描かれていくのか? 荒々しさの中に規律を感じさせる展開に、次を読みたくなります。