隅田天美の回顧録 体が動かねぇ編
隅田 天美
「人間は動物なんだぜ」とジムトレーナーは言った
今朝の話だ。
目が覚めた。
これはいつも通り。
起きようとした瞬間、起き上がらない。
「???」
混乱するが、すぐに原因は分かった。
東京旅行だ。
私は年一で一泊二日の東京旅行で好きな作家の墓参りなどをする。
それの無理が体に来たのだ。
今年は予備日として一日余計に休暇を取ったのだが、それでも体の悲鳴は収まらない。
幸い、上半身は動く。
起こそうと思えば起こせるが、股関節が阿鼻叫喚だ。
慌てる。
時間は刻々と過ぎる。
その時、私が通っているスポーツジムのトレーナーの言葉を思い出した。
『隅田さん、調子の悪い時は動物を参考にしなさい。俺の家に猫がいるんだがね、体の調子が悪いと部屋の隅で最低限の飯食って寝て、トイレ以外動かん。人間って薬とか頼りがちだけど、人間の回復力は馬鹿にできないよ』
私は覚悟を決めた。
職場に電話で有休休暇を取る連絡を取って、寝た。
が、眠れない。
それどころか、「あの仕事、大丈夫だろうか?」と不安になる。
--覚悟しただろ?
無理をしたところで迷惑をかけるのがオチなのだ。
テレビやネットは論外、小説を読むほど脳の解像度は鮮明ではない……
眠いのに眠れない。
体は疲労困憊の下半身に集中的なケアをしているのか、脳への血流もよくないみたいだ。
眠れたとして、ほんの数時間。
二時間程度が限界だ。
脳の解像度が普段通りになったのは夕方ごろ。
仕事が終わるころだ。
その時、私は全裸で布団にくるまっていた。
とてもじゃないが、まともなご飯を作る気力もなく、カップうどんを啜る。
今はだいぶマシな思考をしているが、疲れた時、体の不調の時は素直に従ったほうがいい。
体の「SOS」は放置すると、時にとんでもないことになりかねない。
また、ジムのトレーナーの言であるが、確かに人間の回復力は馬鹿にできない。
人間の体は未だに精密な機械よりも精巧に出来ている。
それをより効率的にするのが休むことだ。
ただ、現在の日本において本当の意味で『休み方』を教えてくれる教育や書籍は実は早々にないのが現実だ。
『寝る』一つとっても、ゲームへは何万円と課金して枕は適当というのはよくある話だ。
真の意味で『休む』への道は果てしなく長く、険しい。
隅田天美の回顧録 体が動かねぇ編 隅田 天美 @sumida-amami
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