さばきのさなえ

大舟

第1話

『さばきのさなえ』は、小説家である佐伯俊哉さえきとしやによって1998年の春に書かれたホラー・ミステリー小説である。出版社は旧中英出版。


【作品概要】

女子学生である”さなえ”はある日、同じクラスの同級生である”たつや”から思いを告白される。しかしさなえは自分にその気はないと言って告白を断るのだが、逆上したたつやはさなえに暴力をふるってしまう。それに対してさなえが抵抗しようとし、たつやの体を強く手で押したところ、さなえからの反撃を予測していなかったたつやはバランスを崩して転倒、頭を強く打ち、出血を伴ってそのまま意識を失ってしまう。それを見たさなえは湧き出る恐怖心から、急ぎその場から逃げ出してしまう。次の日、昨日の出来事から学校へ行くことが億劫だったさなえだったものの、休むわけにもいかないので渋々学校に足を運ぶ。しかしその日、たつやが学校に姿を現すことはなかった。次の日も、その次の日も、たつやは学校に現れない。不気味に思ったさなえは、担任の目を盗んでクラスの名簿一覧を見ることとした。するとそこには、たつやの名前さえないのだった。まるで”たつや”なる人物など最初からいなかったと言わんばかりのその名簿を目にして、さなえはますます不気味な思いを心に抱くのだが…。


【反響】

比較的マイナーな出版社からの小説ではありながら、本作はそれなりの売り上げを記録したとされる。しかし重版はされなかったようで、初版のみの出版となった。


【疑惑・都市伝説】

本作を語るうえで最も話題となるのが、その内容の変異である。本作を読み終えた者同士が互いに感想を語り合う時、呼んだ話の内容が互いに全く異なるもののように認識されるのだ。ある者は本作の結末について「さなえは裁きをうけて最後には死んだ」と語ったが、ある者は「さなえの方が相手に裁きを与え、殺した」と語ったりした。しかし話の内容が異なっていた者同士であっても、もう一度最初から本作を読み直した時、あるひとつの結末が共通して現れたという。すなわち、一度目に読んだ時と二度目に読んだ時とで話の内容が変わっているというのだ。心霊作家の島田優斗氏は自身の著書である『怪異』の中で、これらの現象について「そもそもこの小説は、事実に基づいて書かれたノンフィクション作品である可能性がある。元となった事件が世間的に全く知られていないために、このような形となって我々に何らかのメッセージを送ってきているのではないだろうか」と分析している。


【著者概要】

佐伯俊哉。四国出身作家。趣味は楽器演奏。

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さばきのさなえ 大舟 @Daisen0926

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