番外編

朝、目をさめるといつもと違い部屋が明るく味噌汁の匂いが身体に染みる。

いつぶりだろうか。

「おはよう。よく寝てたね」

と彼女が私の顔を覗き込む。

どれだけこのことを夢見たか。彼女に起こされることを。


熱い水が頬を伝う。


報われた。この短い間だけでも彼女との日常を過ごすために私は、犯罪に手を染めた。多分、死刑だろう。だけど死ぬことより彼女とこの光景を一緒に見れていることで、とても嬉しい。

だけど、この穏やかな朝が続くはずもない。もう、足音はすぐそこまで来ているのに気づいた。

彼女の笑顔を焼き付けるように、ゆっくりと目を閉じた。


「どうしたの!?大丈夫?!」

と驚いた様子で聞いてくる。その仕草も彼女に【感情】があることの現れだと思い、泣いてしまう。


「大好きだ」


「ええ。私も……ずっと」

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