赤茶けた丘が点在する。何処までも続く
地平の中で、只その町だけは
まるで、取り残された様に。
全ての世界線から退く事を諾々と許容した
その町。人々の夢も希望も、何やら澱んだ
水溜りの奥底に揺蕩う。
そんな町の中で 彼 は独り
拳を握り締める。
倦怠感の中で喘ぐ彼は、まるで思春期の
むずかりの様な甘くて哀しい絶望を
抱える。
いつか、この町を出て行く。
それは彼の心の奥底で、いや、魂の
核から零れ落ちる、温かな水。
澱みなく澄み切った彼の 意志 は
果たして、何処へ赴くのか。
物語は、まだ始まったばかり。