はじまりの朝
「うん、今日も星が綺麗だなあ!」
夜風に揺れる髪は闇に溶け、好奇心に光る大きな金の目が夜の闇の中できらりと輝いた。
幼い頃は、夜中に独り布団の中で目が覚めると寂しくて。それでも朝が来てもやっぱり自分は独りぼっちな気がしたから、夜の闇に紛れて何処かへ行ってしまえば父や里の皆にとっていいのではないかと思ったりした。
けれど、布団を抜け出し兄と歩いた森の木々の隙間から見えた星や、夜の森の終わりから見える朝焼けの地平の美しさがイルをここに留まらせた。
皆とは違う金の瞳は、夜目が利くから夜の闇も森の暗さも恐ろしくはなかった。
寂しくなった時は、新しい花や草や、動物達との出会いがイルの心を慰めた。
兄が、妹であるイルのことを大切だと言って微笑んでくれるから、イルは笑っていられた。
イルは今年、十四になった。
イルの住まう国では十四は成人の年で、イルの里では成人の折に、ある儀式が行われる。
その儀式を全うすることが出来たら……自分も一族の一人として皆に認めてもらうことが出来るだろうか?
東の空が地平からうっすらと赤みがさしてくる。
イルが踏んだ小枝の音で鳥が飛び立った。暁色と闇のグラデーションの中、白い翼の鳥達が空に美しく浮かぶ。
イルにはあの鳥達のような翼はないから、飛んで何処かに行くことは出来ない。羨ましくないと言ったら嘘になるけれど、イルは鳥になりたいとは思わない。
昇る朝の光に瞳を輝かせて、イルは一人声を上げた。
「……大丈夫。……私は頑張れる!」
大地を踏みしめて前を向く。イルは唇を笑みの形に持ち上げた。
❖【改稿版】アルカーナ王国物語~赤毛の剣士と夜明けの狼~へ続く❖
https://kakuyomu.jp/works/16818622170116351598
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夜明けの運命-さだめ-~アルカーナ王国物語 はじまりの朝~ 🐉東雲 晴加🏔️ @shinonome-h
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