概要
零落し果て失い果て、魂すらも崩れた者が、怖ろしくも哀しく踊る、その暗闇
天下無双の男になる ――― 希望と自負に満ちみちて渡米した兄は、廃人となって帰参して。
うす暗い裏手の離れにもう一年も、蟄居しているのでした。
KAC2025 第5回、三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」参加作品です。
うす暗い裏手の離れにもう一年も、蟄居しているのでした。
KAC2025 第5回、三題噺「天下無双」「ダンス」「布団」参加作品です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!異界の神でなければならなかった。
旧家の離れに引きこもる狂人、という定番のシチュエーションで始まる本作だが……ご安心頂きたい、そこから飛び出す怪異(?)は絶対に予想外のシロモノなので。
当時の日本人にとっては世界観の外にある、まさしく異界の神しか彼を救うことは出来なかったのだろう。彼にとって日本の神は「見下し合う家族や隣人」の延長だろうし、キリスト教の神など彼を拒絶した米国そのものだ。どちらも唾棄すべき存在でしかなかったろう。
ついでに言うと、彼は狂ってさえいなかったのかもしれない。彼は何一つ理解できぬ異界の神を「狂信するフリ」をしていただけなのではないか……狂いたいのに狂えない、それもまた一つの地獄には違いない。 - ★★★ Excellent!!!泥の沈む沼
武江成緒さんのことを、わたしは「無冠の帝王」と呼んでいる。※受賞歴はお持ちである。
浮世の栄誉なるものに縁はなくとも、我ここに在りと燦然たる存在感を放っている書き手さんだ。
その作風はホラーではなく『怪奇』と呼ぶのが相応しい。摩訶不思議や、あやかしではなく、怪奇。
巧い人間など掃いて捨てるほどいる。
その中にあっても、砂利の中に混じった黒い金剛石のような方なのだ。
積み重ねてきた想像力から一滴一滴と摘出される黒い文章。
そこには奇妙な魚が、幾重にも沈殿した泥の奥から硬い鱗をぎらつかせてこちらを見ており、退化したその薄灰色の眼玉で不意にぬっと威かしてくる。
もやもやと立ち…続きを読む