傑作

『卵焼きの木』は、現代のSNSやネット社会に潜む謎と日常の狭間を巧みに描いた物語です。普通の学校生活に突然現れた不思議なECサイトがもたらす不可思議な出来事が、リアルな教師視点で語られており、現代の子どもたちが抱える問題や大人の無力さがひしひしと伝わってきます。

「無料で本物が届く」という非現実的な現象がミステリアスな雰囲気を醸し出しつつも、登場人物たちの感情や葛藤が丁寧に描かれているため、読者は物語に引き込まれます。特に教師と生徒、母親の微妙な関係性がリアルで、単なる怪談や都市伝説とは一線を画しています。

読後には、現実と虚構の境目を考えさせられ、現代社会の影の部分に目を向けさせられる一作でした。ネット社会の怖さと同時に、人の絆や信頼の尊さも感じられる、深みのある作品です。

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