港の妖精
啄木鳥
海釣り、港にて
しがないサラリーマンである俺、伊藤修二は趣味である釣りをするために、休日の明け方とある港に来ていた。
まだ日は昇っていないが近くに常夜灯があるため、辺りはそこまで暗くはない。おかげで手元もよく見え、餌の取り付けなどの釣りの準備をスムーズに行うことができた。
「……よしっ」
餌を付け終わったので、俺は立ち上がって竿を大きく振り仕掛けを海に向かって投げる。
ポチャン!
そうして、時折竿をクイッ、クイッっと小さく動かしながら待つこと約十五分。
「おっ!」
何か掛かったようで、竿の先端がしなり引っ張られるような感覚がした。
しかし、掛かった魚が小さかったのか、リールがするすると巻けてしまう。
「あっ!」
と思ったら急にふっと竿が軽くなった、どうやら逃げてしまったようだ。
俺はそのままリールを最後まで巻いて針を手に取り、また餌を取り付けるためにしゃがんで入れ物から餌を取り出す。
「……ん?」
餌であるゴカイを針に取り付けようとしていると、視界の端に何かが映る。
不思議に思って顔を上げると、堤防の先端の方に七色に光る何かが飛び回っているのが見えた。
「きゃは!きゃはははは!」
その何かはそんな人間の笑い声のような、薄気味悪い音を発していた。
俺はその異様な光景を見て、すぐにその場を去ろうと荷物を置いて走る。
「きゃははは……は?」
そこで薄気味悪い音が急に聞こえなくなったので思わず後ろを振り返ると、飛び回っていた何かが空中で静止している。
何故か、何かがこちらを見ているような気がして、全身に悪寒が走……
……………………プツンッ
そこで、俺の意識が途絶えた。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
『……次のニュースです 昨日午前八時頃、○○町の港で近隣住民から「人が海で溺れている」と119番通報があり、駆け付けた消防隊が救助したところ、一人の死亡が確認されました 死亡したのは三十代くらいの男性で、救助時には死亡してからあまり時間は経っていなかったとのことです 現在警察が身元の確認を行っています』
………………
『近隣住民の話によりますと、この港では時折人の笑い声のようなものが聞こえていたということです 警察は、事件の可能性もあるとして現在調査を進めています』
港の妖精 啄木鳥 @syou0917
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます