ニトリの降臨

青切 吉十

住めば都

 日本にはいろいろなチェーン店がある。

 その中で、いなかの人びとがいちばんあこがれているのは、スターバックス・コーヒーにちがいない。

 家の近所に出来てほしいお店ナンバーワンであろう。まあ、埼玉県の行田市みたいに、反対運動が起きている地域もあるけれど。


 家の近所にスタバができたとき、ぼくは小躍りした。

 ちなみに、ぼくはスタバが日本に進出したばかりのとき、偶然、東京で入店したことがある。セルフだと気づかず、ずっと椅子に坐っていた。東京おそがい。

 そんなスタバも身近にあると、ほかのファストフード店とたいしたちがいがあるわけではないことに気がつき、よく行ったものだ。

 新作のフラペチーノが出るたびに飲み、それに飽きると、気取ってエスプレッソのソロを頼んでいた(ちっこいカップで出てくるやつね)。

 おやつは、近藤聡乃の「A子さんの恋人」の影響でシナモンスコーンばかり食べていた。いまはもうないが。

 さいきんは勉強している人が多くて行く気にならないけどね。


 とスタバの話はどうでもいい。家の近所で増殖してなぜか3軒もある。もうこれ以上、いらない。それより私が来てほしかった、降臨してほしかったお店はニトリであった。

 近所にニトリが欲しかったのよ。ニトリの降臨を待ち望んでいたのだ。

 ニトリはなにがいいかって、2Lのスリッパの種類が豊富なのよ。指先が出ていて、メッシュ生地で、でかいやつがある。それを直接履き心地を確かめて買える。馬鹿の大足には大助かりのお店なのよ。

 ニトリの降臨は本当に助かった。


 いなかといえば、いま住んでいるところもだいぶいなかだが、親の仕事の関係で一時期住んでいた田原市も、だいぶ奥ゆかしい地域だった。

 なにせ、ファストフードがマクドナルドしかなかった。それも一軒。

 いまもスタバにあこがれているだろうね。スタバが進出すれば、人気が出て、採算は取れると思うんだけどなあ。どうだろうか。

 たしかに、ほとんどなにもない場所だったけれど、ぼくは好きだったな、田原。欲しいものはネットで注文するか、豊橋に行けばよかったしね。

 男らしい渥美半島を駆け巡り、キャベツ畑と菜の花畑を愛で、メロンとみかんを喰らっていた日々がなつかしい。

 将来リタイアするときは、田原でのんびり暮らすのも悪くないやも。ではでは~。

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ニトリの降臨 青切 吉十 @aogiri

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