ひな祭り

Rotten flower

第1話

「最近、不審者情報が多くなっています。登下校時には気をつけてください」

先生はそう言った後、生徒は聞き流したかのような軽い返事をする。これを多くの人は「流れ」という。

かくいう私も、そういう聞き流している生徒の一人であった。

ひな祭りが近づいてきて家では雛人形をもう飾っている。上から内裏雛、三人官女、五人囃子。私が知っているのはこれくらいだ。家でも面倒なのか置かれるのはここら辺までで止まっている。

家を開けると目に入る不気味な十体の人形。出迎えているのかわからない顔。私はそれを嫌いとも好きとも言えなかった。

背中のランドセルを置くと、母親が私に問いかけてきた。

「今日、優くん学校に行ってた?」

優くんというのは私の友人である、彼は活発でとても多くの人と仲良くなれる社交的な人だ。でも、確か今日は来ていなかった気がする。

親にそのことを伝えると焦った様子でスマホを操作した。

「ええ、どうやら誘拐されたみたいで……。見かけませんでしたか?」

そう言って、同じ学校のいろんな人へ連絡した。あの不審者情報だろうか。にしてもあの優くんがか、すぐに見つかってくれると嬉しい……。


優くん、来ていない。なんなら、久美ちゃんも来ていない。色んな子が来ていない。

この時期、インフルエンザとも考えられない。そんな大規模誘拐事件があってたまるだろうか。心なしか昨日よりも先生の注意が強くなるばかりではなく、先生がちゃんとついて見送るシステムへと変わった。それくらい警戒しなければいけないのだろう。

「ねぇ、優くんなんで休んでるか知ってる?」

そう聞いてくる子に私は不安にさせないためにも知らないと嘘をついた。守るための嘘だ、仕方がない。


家のドアを開ける、いつも通り彼らが出迎えてくれた、が、母親の気配がない。

「お母さん?」「お母さん!」家中をくまなく探してもいなかった。

私は漠然とした不安を感じた、優くんも久美ちゃんもいなくなって、いなくなることに不安があったのだ。

気づけば家を飛び出していた。母親の行っているところにある程度候補は出る。とは言っても、徒歩で行くには遠すぎる。

……車がさっと私の隣に停まった。

「お嬢ちゃん、お母さんを探しているのかい?」

私は静かに顔を縦に振った。

「お母さんとこの後僕ら合流するんだ、乗っていってよ」

私は藁にもすがる思いで車へと乗り込んだ。乗り込んでしまった。


口を何か粘着性のあるもので塞がれる、視界は軽く真っ黒に染まった。手は何かで縛られている。すっと、体が慣性に揺られて後ろへと倒れる。


「さぁ、トリの降臨だ」

声色明るく男が言う。視界がすっと明るくなる。目の前には惨事があった。


三段の雛壇、一番下には私の友人、優くんを含めた同世代のように見える五人が目隠し、手を後ろに縛られた状態で倒れている。二段目には久美ちゃんを含んだ三人、左から円形の火傷、ギロチン、同じく円形の火傷、三人に轡と目隠しをした状態。とにかく惨事この上ない状態だった。

「さぁ、階段を登って」

男に言われるがまま、私は最上段へ登る。

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