言えばよかった

stdn0316

第1話

 後悔してること、ですか?

 そうだなあ...あんまりないけど、一つ思いつくことがあるんですよ。


 小学校の頃なんですけど、クラス数人であるゲームをやってたんですよ。

 1人用の、異界の扉っていうホラーゲームなんですけどね。


 ホラーゲームなんて嫌なんですけど、そのゲーム機の発売と同時に出た他のゲームが全然面白そうじゃなくて。


 ホラーっていってもアクション要素もあるし、友達もやってる手前、投げ出すのもダサいからビビりながらみんなやってたと思うなあ。


 あの敵どうやって倒したー?とか、あそこの道に隠し通路があって、強い武器取れるぜ、なんて話して、けっこう楽しかったですよ。


 で、大体同じ時期にみんなそのゲームをクリアしたんですよ。

 怖かったけどなんだかんだ面白かったな!なんて言ってね。


 自分でやってると見せかけて、実は兄ちゃんにやってもらってたとか白状するやつもいて、今となっては微笑ましいですね。


 当然ゲームクリアしたらエンディングの話になるじゃないですか。こんな感じでどう思ったって。


 ある友達が言ったんですよ。

「最後終わったらさあ、なんか選択肢出てきたよな!異界の扉を開けますか?って、すげー凝ってる演出だなって思って俺、はいを選んじゃったよ!みんなはどうした?」


 そいついいやつだったんですけど、若干癇癪持ちで気に入らないことあるとすぐ暴れるやつだったんですよね。

 ただ嘘つくようなやつでもなかった。


 言ってやればよかったのかなあ。

 みんなもなんか適当に調子合わせてたよなあ。


 そのゲームにそんな展開ないんですよ。

 ボス倒して、ダンジョン脱出して、ヒロインと結ばれてそれで終わり。


 次の日から学校来なくなったんです。

 あいつ今どこにいるんだろうなあ。






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