終わらぬ長い夜
- ★★★ Excellent!!!
支配的な家庭に育った女性が同じく支配的な男と結婚してしまうのはDV界隈あるあるで、何故かというと、親和性が高いからなのだ。
さらには支配的なDV男は捕食行動期間のうちは理想的な完全無欠の男として登場してくる。
この人ならわたしの親を凌駕してくれるのではないか? と錯覚してしまうのだ。なにしろ支配的な親と同型なのだから。
不倫は基本的に嫌いだが、致し方なしと思っているケースが幾つかある。
その一つが、夫がDV男の場合。
妻は精神的な虐待により自尊心を失っている状態にあるのだが、夫がつくった鳥籠から出て行き、他の男と過ちを犯すと、普通の男の普通の態度や優しさに触れることで、急に威張り散らしているだけの夫が小物に見えてばかばかしくなることがあるそうだ。
法的には完全に不利になるし、妻の性格も関係してくるので勧めることは出来ないが、この方法でDV男から脱出していった女性を数名知っている。
それでも、もしかしたらこの作中の妻は、無能人間呼ばわりされて虐げられている人生を密かに悦んでいたのかもしれない。
彼女を愛する男との自滅的な不貞に高揚しているのかも知れない。
終わらぬ長い夜の過ち、一夜の過ち。
どちらの夜も、女の性は貪欲に呑み込む。
女の涙はしたたかだ。