構造・体験・キャラクターそのものを重視した web 小説の実験作
- ★★★ Excellent!!!
本作は、線形的な物語や単一の世界規則の一貫性を主軸にした作品ではなく、構造と体験そのものを重視した web 小説の実験作だと感じました。
物語本編に加え、ガイドブックや創作論、休憩時間といった章立ての配置からも、「物語・設定・説明・更新行為」そのものを並列に扱う意図が明確に見て取れます。
そのため、世界のルールは必要に応じて一時停止されたり、解説されたり、視点が切り替わったりします。本作は「単一の SF 仮説を突き詰め、その結果を描く」タイプの作品ではなく、私の企画で想定している典型 SF とは軸が異なりますが、これは完成度や熱量の問題ではなく、創作方針の違いだと思います。
また、作者ご自身による挿絵が非常に丁寧で、キャラクターへの没入感を高めている点は大きな魅力です。加えて、セクシー寄りの演出やサービス要素もあり、作品の引きとして機能している一方で、構造レベルの切り替えと相まって、読書体験としてはやや分断的に感じる場面もありました。良い意味で、作者が楽しみながら構築している様子が伝わってきます。
総じて、気軽に読んでも楽しめる一方で、構造を意識して読み込むこともできる作品です。web 小説という媒体の可能性を探る試みとして、印象に残る一作だと感じました。