野良関西人

「しんどい」

電車の中、吊り革に掴まりながら溜息混じりにそう呟いてしまった。これから処理しなければいけない仕事について考えていたら口から出てしまったのだ。やっちまったなと思い隣を見ると、同じく吊り革に掴まっている男と目があった。

「自分、関西？」

声を掛けられてしまった。無視するのもバツが悪い。俺は「いえ、岐阜です」と答えた。

「なんやねん。しんどいなんて言うから」

「しんどいなんて、どこの人間だって言うでしょう」

「そんなことあれへんやろ。アメリカ人は言わへんし」

「アメリカ行ったことあるんすか？」

「……ない」

「ないんかい」

「あ、ほら、そういうツッコミ。関西っぽいわぁ」

「知らんがな」

「お、またもや関西ポイントゲット」

「いらんてそんなポイント。何に使うねん」

「借金がなくなる」

「なるほど、完済ってことね」

「お後がよろしいようで」

その後すぐ駅に着いて俺は電車から出た。

関西人は皆あんな感じなのかと思うと、一生大阪にはいけないなと思った。