2022.9.1 a Birthday Message for Readers, from Fine.
---------------------------
From: 天津原涼子ファインモーション<ryokoAF@xxxxx.com>
To: <readersML_ekivita@xxxxx.jp>
日付: 2022-09-01 12:00:00
件名: 意外なことに、もう23なのよね
---------------------------
天津原涼子ファインモーションです。
二十三歳になりました。
とくに感慨はないんだけど、朝からいろんなものが届いているようです。
両親からはもちろん、親戚筋それぞれからとかゼミの後輩たちからとか。言っちゃあなんだけど、どうでもいい人たちの動きは大抵早いわよね。スピードで差異を付けたいって感じなのかな。
まあ両親をどうでもいい枠に入れちゃう私も私だけどね。
イギリスからは二日前に届いたわ。
発表前の最新ゲームPC最上位機種とそれに合わせたデバイスセット。嬉しいは嬉しいけど、わかってるのかしらあのひとは。今一番ハマってる私のお気に入りゲームのことを。
フィンランドからは絵ハガキが届いた。あの娘も結構律儀なのね。ま、それくらいのことはしてあげたけどね。彼女、向こうは肌に合ってるって言ってるし、いいんじゃないのかな。
いっくんは東京にいるみたい。外資系の商社でまだ研修中ってメールしてきた。
貢物が無いじゃないって返したら、あっちに任したから連名で、ですって。
わかってないとこは相変わらずよね。
そしてすみれ。彼女もスタンフォードで元気にやってる。ときどき帰ってきてはいっくんとの逢瀬を愉しんでるみたい。春には一度、こっちにも足を運んでくれたけど、前よりもずっと生き生きしてた。仕事があっているのね、きっと。
彼女からは、いま西海岸で流行ってる JAMES PERSE ってブランドの前開きドレスが贈られてきた。ゆるっとした感じのシンプルなドレス。子育て中の私には重宝しそう。
かくいう私も、無事卒業して今は曾祖母の会社の専務。ありがたいことにお
それにしても、卒業できたのはコロナさまさまよ。三年前期の一昨年春から最低一年間は休学するはずだったのに、全部オンラインリモートでいいって言うんだからホント助かったわ。おかげで三年-四年の授業は大半をロチェスターで受けちゃった。
現在の私は完全にこの子を中心に回ってる。私という太陽系の中心は、私と燈智の二連星。冷たい白色矮星の私が小さいくせに高熱の新しい恒星に引っぱられ、その二星が
誰に対しても執着しないのが私だったはずなのに、燈智は気になってしょうがない。彼のすることは、その全てが私にとってご褒美になる。笑顔も寝息も胸の先をついばむ唇も、その泣き声さえも。
これが「愛しさ」なのかしら。
この秋にでも機会をつくって、お曾祖母さまに尋ねてみようと思ってます。
私はこれからもずっとこの子を守っていくし、その手段として家と会社の安定が有用なのなら、私は全力を挙げてその仕事に邁進するんでしょうね。
燈智が呼んでます。お腹が空いたみたい。
さ、おいで。ごはんの時間ですよぉ。
2022年9月1日 杜陸の実家にて
涼子
ヒロインたちの手紙 深海くじら🐋カクヨムコン参戦💕 @bathyscaphe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます